田部井剛が指揮をする、ル スコアール管弦楽団の演奏会に行った。
この日の注目は、矢代秋雄の交響曲。
彼の曲を聴いたのは、もう30年くらい前に、ピアノ協奏曲を聴いたきりなのだった。そのときの印象はよかったので、なんで今まで聴いてこなかったのだろう。
この交響曲もいい曲である。4楽章からなり、大量の打楽器とコントラバス8丁、ヴァイオリンが6プルト、ヴィオラが5プルトといった、フル編成から成る。
プログラムの解説がいい。矢代に対する思い入れが濃い。矢代の言葉の孫引きであるが引用させて頂く。
「われわれの世代にとって『夏の思い出』とは終戦である。当時十五歳の私は、生意気にも長大な交響曲の完成を急いでいた。むろん、そんな技術など持合せていなかったが、そんなこといっていられる時代ではない。広島に落ちた新型爆弾とは殺人光線らしい。本土決戦ともなれば生きていられるわけはない。八つの時から作曲家を志しながら交響曲を一つも書かずに死ぬとは....」。
で、書いた。
その音響は、メシアンの「トゥーランガリラ交響曲」、あるいは伊福部昭の影響が強いと思われるが、まさに音のゴブラン織りである。なんと色彩感が豊かなこと! 艶めかしく、ときには冷徹で、なおかつ情熱的。
スケルツォのめくるめくリズムの世界や、終楽章の圧倒的なボリューム感もさることながら、アダージョ楽章が強く印象に残る。コーラングレとアルトフルートによるパッセージは、知性と色気を併せ持つ不思議な響きを奏でていた。ソリストは立派に吹ききっていた。
金管楽器、打楽器群も素晴らしい。活気に満ちていて、精確さと並々ならぬパッションがあった。
あと1曲は「ツァラトゥストラ」。
ソロ・ヴァイオリンは意外に難しいものだということがわかった。普段はアイタイやシュヴァルベ、ヘッツェルなどの名人が弾いている演奏を聴いているから、難しさがわからなかったのだ。
トランペット、トロンボーン、チューバはいい。弱音もきれいに鳴っていた。
途中、チェロとヴィオラのアンサンブルが崩れそうになったが、指揮者が丁寧にケアをし、大事に至らなかった。
総じていい演奏だったと思う。
2014年6月8日、すみだトリフォニー・ホールにて。
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