ミハイル・プレトニョフのピアノ・リサイタルに足を運びました(2019年6月17日、東京オペラシティ、タケミツ・メモリアルにて)。
とても楽しみにしていた32変奏曲がロンドハ長調に変更。これは、昨年キーシンがハンマークラヴィーアをシューマンのソナタに差し替えた時以来の残念さ。
ただ、それを補ってあまりあるとは言えないものの、プレトニョフの類い稀とも言える力量をまざまざと見せつけられたリサイタルであったことは疑えなかったかと。
彼のピアノの最大の特長は、多彩な音色。深く、かつ広がりのある中低音は初夏の厚みある雲のようでもあるし、落日の輝きをも想起する。それが星屑を思わせる煌めく高音と溶け合うと、輪郭が滲んだ曖昧さとクッキリとした色彩とを兼ね備えた虹のよう。まろやかでたっぷりと豊潤な世界が眼前に立ち昇りました。
ベートーヴェンは、恣意的なテンポの変化や間延びしたフェルマータが自然とは感じられなかった。よって、「熱情」におけるラストの追い込みは胸が高鳴るとは言い難く、まるで他人事のように過ぎ去っていきました。
リストは面白かった。中期から後期にかけての小品を並べた選曲はあたかも組曲のよう。柔軟な起伏も考えられていた。先に述べた彼の特長は、ここで最大限に生かされていたように感じられました。テクニックはおそらく当代トップクラス。
なんだかんだ言いましたが、また聴きたいピアニストです。次回は是非とも32変奏曲を。
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