後楽園の脇、銀杏並木の黄色い道を通ってシビックホールへ。
メイエはかねてから気になっていたクラリネット奏者。モーツァルトやブゾーニのコンチェルトを聴いて気に入った。
チケットは友人の計らい入手できた。席はほぼ正面の前から2列目。室内楽を聴くには絶好のポジション。
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581
ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op.115
ポール・メイエ(クラリネット)
アルティ弦楽四重奏団
豊嶋 泰嗣(ヴァイオリン)
矢部 達哉(ヴァイオリン)
川本 嘉子(ヴィオラ)
上村 昇(チェロ)
メイエのクラリネットの良さは、息の長い弱音の伸びの精確さと、中低音のなめらかさ・柔らかさ。
モーツァルトでは、強弱の変化をときおりつけて、流れにメリハリを持たせていた。ときおり鳴らされる、ハッとするようなピアニッシモには背筋が痺れた。
第一ヴァイオリンの豊島は、新日本フィルの首席。とても繊細な歌いまわし。あまりに繊細なので、ときには細かいパッセージが埋もれてしまうこともあったが、それを補って余るほどの優美なヴァイオリン。
CDでは何度聴いたかわからない曲も、こうして目の前で演奏しているのを見ると、それぞれの楽器がいかに多彩に動き回っているかがわかって面白い。
ブラームスは、反対に2丁のヴァイオリンが同じフレーズを奏する場面が多い。そうすることで当然ながら、厚い響きが醸し出される。
メイエの技はここでも冴えている。ことに先ほど言った中低音のしなやかな響きは、鳥肌が立つほど。
ここでで第一ヴァイオリンは矢部。こちらは、東京都響の首席。こちからどちらかというと、カッチリした明確な音でみんなをリードする。
川本のヴィオラは大胆、上村のチェロは端正。いかにもブラームスらしい、渋い音色が魅力的であった。
アンコールは、チャイコフスキーの「秋の歌」。武満徹の編曲。甘いメロディーが優しく胸に響いた。
ソリストみんなが持ち味を出した、よいコンサート。贅沢なひとときを満喫できた。
2013年12月11、東京、文京シビックホールにて。
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