日本フィル669回定期演奏会へ行く。
演目は以下の通り。
ブラームス ピアノ協奏曲1番
ピアノ:アンジェラ・ヒューイット
ブルックナー 交響曲7番
超重量級プログラムである。聴くほうはなかなか骨が折れるし、演奏者はもっと大変だろう。ブルックナーの途中で疲れてしまうのではないかとの懸念は杞憂に終わった。
ブラームスのオーケストラは後述するが、弦楽器群がブルックナーと同じサイズだったのでかなり厚かった。よって、ピアノと交錯する場面になるとしばしばピアノの音をかき消してしまった。主に1楽章と3楽章の激しい箇所でである。ヒューイットの音量は、ことさら小さいわけではなかったので、オーケストラがいささかおおぶりだったように思う。
よってこの曲の最大の聴きどころは2楽章。ピアノは、彼女の希望によりファツィオリ社製のものを使用したという。まるやかな音。フォルテッシモでもふんわりとしていて全体的に柔らかな印象をもった。もっとも、知らなければスタインウェイとの違いはわからないのだが。
ヒューイットはブラームスの憂愁を、とても丁寧に描いていて気持ちが良かった。それはまるで春の夕焼けのように、しみじみと心に沁みた。彼女のソロを聴いていたくなった。
休憩を挟んでブルックナーの7番。コントラバス8丁、ヴァイオリン5プルト、ワーグナー・チューバ4台の威容。ブラームスも同様だったが、ヴァイオリンは対抗配置、コントラバスは左後方。坐った席がRA(舞台向かって右手の雛段)だったので、ヴァイオリンのステレオ感は味わえなかったものの、インキネンの指揮ぶりをじっくりと観ることができた。
テンポは全体的にやや遅め。じっくりと弦をうねらせる。トランペット・ソロのクリストーフォリは、響きが柔らかく弱音でも揺れない安定感があった。客演の首席奏者とのこと。30年前の日本のオケでは考えられないほどのクオリティの高さがある。ホルンとワーグナー・チューバも安定していた。技術的なことはわからないが、強い音を吹くよりも弱音を響かせるほうが難しいだろう。それを難なくこなしていた。フルートの真鍋恵子は音の毅然とした佇まいが素晴らしい。
インキネンを初めて聴いた。フィンランドの指揮者のブルックナーは、もっとテンポが速く、スッキリと見通しの良いものではないかと邪推したが、いい意味で裏切られた。眼鏡をかけて楽譜を読みながら指揮をし、奏者にあまり細かい指示を与えないというスタイル。大枠でテンポと音量をコントロールすることに終始していた。その結果、まるで朝比奈やヨッフムを思わせる、分厚いブルックナーができあがった。
2楽章の登頂では、ティンパニとシンバルとトライアングルが炸裂。1楽章と4楽章のラストは粘りに粘って、輝かしいエンディングを築いた。鳥肌がたった。
2015年4月25日、東京、サントリーホールにて。
スイーツ。
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