セミヨン・ビシュコフ指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会に足を運びました(2019年10月24日、文京シビック・大ホールにて)。
スメタナ:「わが祖国」より「高い城」
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
樫本大進(ヴァイオリン)
ドヴォルザーク:交響曲9番「新世界より」
チェコ・フィルを聴くのは台北以来、約15年ぶり。
当時舞台だった国家音楽廟は音響はまずまずだと思うけれど、遠い席だとデッドに聴こえることがあり、チェコ・フィルの持ち味である濃くて甘い薫りは堪能できずじまいでした。演目は、ドヴォルザークのピアノ協奏曲と7番交響曲。指揮者の問題でもあったのかな。マカールだった。
今回は若いころに好んで聴いたビシュコフが振るということで、いそいそと聴きに行きました。
「新世界交響曲」をまともに聴いたのは、たぶん数十年ぶり。このシンフォニーはもう正直言って、このあとの人生で聴かなくてもいいかと思っていた。それは、間違いでした。
コクのある弦楽器がリードする1楽章に続いて、「家路」と云われる2楽章が桁外れだった。コールアングレの響きは朴訥でありつつ、太くて柔らかく豊かなもの。それだけでもそうとうだけど、ビシュコフの指示であろう、きめ細やかに曲線を描いて世界に響き渡るところは、幽玄にして闊達。心を鷲づかみにされました。
なんという音。自分の貧弱な想像力をはるかに超えた響きが、この世にはあるんだなぁ。あたりまえ。
3楽章以降も木管とホルンを軸に素晴らしかったけれど、この曲については、2楽章に止めを刺します。
編成は16型。
樫本さんのチャイコフスキーもよかった。以前に聴いたモーツァルトのソナタでは、細くて可憐な音をまき散らしていた彼のヴァイオリンは、ここではグッと腰を落として濃厚な味付けを施していました。いくぶんくすんだ音色が熱かった。
なるほど、彼のヴァイオリンの表情は曲によって異なるのだな。それは彼がオケのコンマスを主たる仕事としているかもしれない、というのは推測。
1曲目の「高い城」は、やっぱりハープがよかった。左右からポロンポロンと雅に鳴るところ、浮世を忘れるような崇高さがありました。意外にも音は大きく、大ホールを素敵に彩りました。
いままで、チェコ・フィルが来日のたびに「新世界」をやることを不遜にも馬鹿にしていましたが、今回の公演でそんな思いを改めます。ほんとうに参りました!
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