クリスティアン・ツィメルマンのピアノ・リサイタルに足を運びました(2019年3月16日、横浜、みなとみらい大ホールにて)。
彼のピアノに初めて接したのは、ショパン・コンクールを制した少しあとに、カラヤンとやったシューマンとグリーグの協奏曲だったと記憶します。それ以降、ディスクやFM放送では何度も聴きました。なかでも、ブラームスの3番ソナタは彼の演奏で面白さを知ったのだし、弾き振りでのショパンのコンチェルトには度肝を抜かれたものです。
彼の生演奏を聴くのは初めてでしたが、ショパンとブラームスの衒いのない演目だったので、今現在のスタイルや力量が如実にわかるのではないかと期待しました。
ショパン マズルカ №14,15,16,17
ブラームス ソナタ2番
ショパン スケルツォ全曲
結論から述べると、音色の美しさとフレージングの深さ、ダイナミックの広さにおいて、第一級のピアニストであると感じました。
とりわけ印象に深く刻み込まれたのは、スケルツォの1番と2番。
ピンと張りつめた空気の揺れ。でも、それは私に過度な緊張を強いることなく、しなやかにたゆたっているようでもあった。生命の弾みを圧縮した、濃厚な時の流れを感じないではいられなかった。
なんと贅沢な時間!
ブラームスの1楽章では途中退屈になってウトウトし、夢まで見てしまいました。3番は大好物だけど、2番はまだ面白さがわからない。。
今回の日本公演にあたり、ツィメルマンは自身のスタインウェイを持ち込んでいるという話を聞きました。真偽はともかく、ピアノの状態は素晴らしいものでした。音が多いところでは、ひとつひとつの音符が満開の桜のように煌めき、フォルテシモにおける透明度は冬山の湖を思わせました。
席は二階の正面前方。舞台までの距離が遠かった。極端な話、東京文化会館の倍近くあるように感じられ、オペラ・グラスは限界ギリギリでした。
ピアノ・リサイタルをやるにはいささか広いホールかな。
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