ポーランド国立ワルシャワ室内歌劇場による、モーツァルト『フィガロの結婚』公演に足を運びました(2019年11月10日、東京文化会館大ホールにて)。
結論から言うと、これは予想をはるかに超える名演。
なにはともあれ、歌手がいい。たっぷりとしたトルクの声量、艶やかな音色、音程の安定感、きめ細かな表情づくりと言った点において、誰もが水準を超えるレベルだったと思います。
なかでふたり特筆すれば、スザンナ役のガポヴァ。優美ななかに羽根のように強靭なしなやかさを湛えた声は、CDでもなかなか聴いたことがない。強いて言えば、ルチア・ポップ。彼女の、素敵に浮世離れした歌にも匹敵するくらいではないかと。
もうひとりはケルビーノ役のモノヴィド。メゾで歌われることが多いこの役、カウンター・テナーが起用されました。ズボン役だからとっぴなことではないと思いつつ、聴いたのは初めて。最初は、背の高さに苦笑。でも、歌そのものは素晴らしいし、ペーソス溢れた演技に唸りました。
オーケストラは8型。ピリオド奏法だったようで、トランペットなど一部に古楽器を採用。3時間のなかで目立った瑕疵は2度ほどだったから、精度は高いものでした。
スワコフスキのリードは、テンポは中庸、なんともイキがいい。
全編を通して、笑いあり涙ありのあたりはダ・ポンテの才能に他ならないのでしょう。
そして、やはりモーツァルトの素晴らしさは群を抜いている。かなり控えめに言っても、異次元の音楽ではないかとさえ感じます。
なにはともあれ、フィガロに乾杯!
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