パッパーノ指揮パリ管弦楽団・他の演奏で、ヴェルディ「ドン・カルロス」【フランス語5幕版】を聴きました(1996年3月、パリ、シャトレ座での録音)。
このディスク、まず歌手がいい。
アラーニャをオペラの全曲で聴くことは初めてかも。カルロスはしばしば、ロドリーグに食われることがある。でも、ここではすごい存在感がある。ハンプソンは、コクのあって力強い声でもってヒロイックな役を演じ切っており、かたやアラーニャは艶やかで伸びのある歌いぶりでナイーヴなカルロスを作りあげている。いい勝負。
好きなエボリ公女のふたつのアリアは、たっぷりとした声量で優美に歌いあげられています。悠然をしていてスケールが大きい。可憐さもある。いい歌だと思います。
エリザベートもまたカルロスに似て神経質なキャラクターという印象ですが、ときに披露する絹糸のように細やかな声はそんなイメージ通りだと思ったし、なかなか魅力的。
フィリップ2世、大審問官はじゅうぶんに立派。このあたりのバス・バリトンの役柄は、あまりハズレはないのじゃないかな。
パッパーノのオケは、堅実でありながら色彩感豊か。オペラでのパリ管を聴くことはそう多くないのですが、個人技も香りもいい。パッパーノの統率が優れているのかもしれません。
この演奏、全体を通して過去の名盤と云われるもの(サンティーニのDG、カラヤン・ウイーンのライヴ)と比べても引けを取らない演奏ではないかと。録音が優れているところもポイントが高い。
ロベルト・アラーニャ(ドン・カルロス)
トーマス・ハンプソン(ロドリーグ)
カリタ・マッティラ(エリザベート・ド・ヴァロア)
ジョゼ・ヴァン・ダム(フィリップ2世)
ヴァルトラウト・マイアー(エボリ公女)
エリック・ハーファザン(大審問官)、他
シャトレ座合唱団
パリ管弦楽団
アントニオ・パッパーノ(指揮)
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