東京クァルテットの演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲15番を再び聴きました(1990年、プリンストン大学、リチャードソン・ホールでの録音)。
この演奏を聴いたのは約5年前。ほんとうに鮮烈な印象がありました。
その後、ズスケ、アマデウス、ゲヴァントハウス、エマーソン、ラサール、ボロディンなどのディスクに触れ、それぞれ違って素晴らしいと毎度のように感銘を受けたものです。
久しぶりにこのディスクを取り出したのだけど、やはりいい。硬質で、キリっとした佇まい。とても気持ちのよい演奏。
この曲、ベートーヴェンは当初4楽章構成を考えていたらしい。でも、病気のために作曲が中断される。腸カタルである。やがて快復し、再着手した際にひとつの楽章を挿入するよう計画を変更した結果、5楽章の形式になったとは、Wikiから。
白眉は、追加された第3楽章のアンダンテ。これには、「病癒えたる者の神に対する聖なる感謝の歌」との頭註が伏されています。
諦念したような穏やかさ。料理がまずいと言って、店員に皿を投げ付けた人物とは思えません。せつない旋律のなかから、ヴァイオリンによる、おそらく希望というやつがキラリと光るところがいい。たまりません。
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