チョン・ミュン・フン指揮パリ・バスティーユ歌劇場管弦楽団・他の演奏で、ヴェルディの「オテロ」を聴く(1993年5月、パリ、バスティーユ、サル・グノーでの録音)。
これは、ことオーケストラに関して言えば、(カラヤンのすごい演奏があると知りつつ)これ以上の出来を想像するのは難しいし、今後そう簡単には他の追随を許さないであろう演奏だと思う。
チョンの指揮は全編にわたってしなやかな躍動感に満ち溢れており、キレ味も瞬発力も抜群、細部に関しても目がしっかりと行き届いている。歌手たちとのタイミングも完璧に合っていて隙がない。
オーケストラの状態はすこぶるよく、軽やかで色調は明るめ、でもここぞというときには、ものすごいフォルテッシモが爆発する。2幕の最後の追い込みは、歌手の熱演と相まって、手に汗を握らないではいられない。
歌手たちもいい。
レイフェルクスのヤーゴはわりと抑えた歌唱だと思うが、声そのものは多彩な変化があって楽しく、悪役を理知的に歌いきっている。
ヴァルガスのカッシオは表情が豊か。こういう人の舞台は映えるであろうと思う。
スチューダーのデズデモナは、やや線が細いと感じる人がいるかもしれないが、このくらいが好み。声の質が繊細であるところが、幸の薄さをあらわしているようで素敵だ。
ドミンゴのオテロ、これは録音年代からいっても彼の絶頂期にあたるものだし、オテロはまさにハマリ役。技術的に高いことはもちろんで、感情の豊かな描き方という点でも、抜きんでている感じ。
プラシド・ドミンゴ(オテロ)
シェリル・ステューダー(デズデモナ)
セルゲイ・レイフェルクス(ヤーゴ)
ラモン・ヴァルガス(カッシオ)
デニス・グレイヴス(エミーリア)
ミヒャエル・シャーデ(ロデリーゴ)
イルデブランド・ダルカンジェロ(ロドヴィーコ)
オー・ド・セーヌ聖歌隊
パリ・オペラ座児童合唱団
パリ・バスティーユ歌劇場管弦楽団&合唱団
パースのビッグムーン。
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