ジュリーニ指揮ウイーン・フィル、他の演奏で、ヴェルディの「リゴレット」を再び聴きました(1979年9月、ウィーン、ムジークフェラインザールでの録音)。
これはウイーン・フィルの琥珀の音色が彩る、しっとりと落ち着いた演奏。
歌手はカプッチッリのタイトル・ロールがじつに素晴らしい。娘を思う悲哀を、凛々しく歌いあげています。声そのものの魅力もさることながら、技巧も完璧に近いのではないかと。
それからギャウロフ。いつも通り、古寺の大柱のような安定感があり重厚。この人はいつも期待を裏切らない。
ジルダという役の可憐さはコトルバスにうってつけかと思っていたけど、さほどコケティッシュではないように感じました。この録音の前後に録音された「トラヴィアータ」のほうが好調に思える。あのような光彩は、ここではちょっと薄いような。
ドミンゴは硬軟織り交ぜた歌唱が見事。声が若い。やや線は細いけれど、終始に渡って透き通るような美声はさすが。特に好きな歌手ではないが、畏敬の念を感じないわけにいかない。
ジュリーニの指揮は陰影を感じさせるものです。先月に聴いたクーベリック盤が夏の花火のような熱狂だとすれば、これは内省的な「リゴレット」と言えるかもしれません。好みが分かれるところでしょうが、ウイーン・フィルの、背筋がぞっとするほど柔らかく肌理細やかな弦は、問答無用に美しい。
ピエロ・カプッチッリ(リゴレット)
プラシド・ドミンゴ(マントヴァ公爵)
イレアナ・コトルバス(ジルダ)
ニコライ・ギャウロフ(スパラフチーレ)
エレナ・オブラスツォワ(マッダレーナ)、他
ウィーン国立歌劇場合唱団
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