ヴィヴァルディ「四季」 カラヤン指揮ベルリン・フィル シュヴァルベ(Vn)島田荘司の「進々堂世界一周シェフィールド、イギリス」を読む。
この短編は、探偵・御手洗が登場するものの、ミステリーというよりはいわゆる「ちょっといい話」。御手洗がイギリスのシェフィールドを訪れたときに、知的障害者に出会う。スポーツの好きな彼は、高度なルールを必要とする競技をあきらめ、自分ひとりの力で勝負のできる重量挙げに青春をかける。障害者に対するさまざまな偏見を乗り越えて、イギリスで随一の選手になっていく過程を描く。
元オリンピック選手に認められるくだりはいささか出来過ぎのような気もするが、ひとつのお伽話として上等でしょう。
この夏は、ヴィヴァルディの「四季」を比較的よく聴いている。イ・ムヂチとアーヨのもの、プティット・バンドでクイケンが弾いたもの、そしてシュヴァルベが弾くこのカラヤン。一時期は、この曲にいささか食傷気味になって遠ざかっていたが、聴いてみると、やはり多彩であり、構成もしっかりしているし、ソロも充実したいい音楽だとしみじみ感じる。
カラヤンはバロック音楽を演奏するときも、わりと大きめの編成を用意する。ここでも例外ではない。弦楽器群の響きの分厚さは群を抜いていて、クイケン盤の3倍はあるのじゃないかと思うくらい。
「夏」はもともと気だるい感じのする、暑苦しい音楽である。それがカラヤンの演奏だと、カロリーは高いわ、湿度も多いわで、とてもリアルな猛暑といった風情。逆に「冬」なんかは、暖炉のきいた部屋にいるみたい。ポカポカして心地よい。
シュヴァルベのヴァイオリンは、適度にドスがきいており、メリハリが強い。オーケストラに負けない重量感がある。まあ、これくらい強い音じゃないと、バランスがとれないのだろう。
全体的に重厚さが優っている演奏であり、これはこれで面白い。
でもまあ、しばらく聴かなくてもよいかな。
1972年8月、サンモリッツ、フランス教会での録音。
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