椎名誠の「ぼくは眠れない」を読む。
不眠症歴8年である。最近になって、ようやく睡眠導入剤を使わなくても眠れるようになった。どうしても早く眠る必要があるときだけ頓服を使用する。
眠れないのはツラい。椎名と同じように、睡眠に関するさまざまな本を読んだ。大きくわかったのはふたつ。酒は深い眠りの妨げになることと、規則正しい生活が肝要だということ。うすうすはわかっていた。けれど、酒を飲んでも深く眠りたいというわがままな注文を満たすために、わらをもすがる思いだ。
そんなわけで、この本を手に取った。
椎名が不眠症だとは盲点だった。冒険飲酒アウトドア焚火野郎とのイメージが強いからである。だから、精神疾患とは無縁の人だと思っていた。でも考えてみれば、彼は作家が本業である。月並みだが、どこかしら心がイカれていなければ作家などにはならないのだろう。
本書に期待したのは、眠りたいときに深く眠るにはどうしたらいいか、の対処法である。この点に関して言えば、いままで読んだ本に加えるべきことはあまりない。つまり、酒は控える。規則正しい生活を送る。寝る前にゆっくり風呂に浸かる。眠る前にテレビやパソコンを見ない、などである。
そもそも作家なのだから、好きなときに眠ればよさそうなもの。ときどき発生する取材旅行の出発が早いから前日眠れないのは困る、などという悩みは、我々勤め人からしてみれば小さなことと言わざるをえない。
ヤノフスキ指揮ドレスデン・シュターツカペレの演奏で、ワーグナーの「ワルキューレ」を聴く。
この「ワルキューレ」でもまた、ショルティ/ウイーン・フィルの演奏との比較で書いてみる。
録音当時、最高クラスのキャストを揃えたところはショルティと同じ。世評はショルティ盤のほうがいいようだ。
ここでは、ジークリンデをノーマンが歌っているところが、ひとつの聴きどころじゃないかと思う。彼女は80年代において最高のソプラノのひとりであったし、ワーグナーを歌うことはわりと珍しいから。期待が大きすぎたせいか、それほどのインパクトは感じない。ノーマンの声は重厚なので、それがこの役にあっているのかとの疑問がありつつも、優等生的にキッチリとこなしていることは感じられる。なかなかいい。
イェルザレムは、キングのあとに聴くと劣る。技術的には申し分ないし、表情も豊かだと思うのだけれど、声そのものの質が地味だ。ここはショルティ盤がいい。
アダムのヴォータンは好き。ロンドンに比べるとバリトンかと思うくらい高く感じるが、若々しくていい。神様なのであえて老成しなくてもいいのだ。よって、ここは互角。
モルとミントンも中庸。あえて目立たないようにしているわけではなく、彼らのスタイルなのだろう。このあたりは演奏全体に感じる。なんにしても派手なショルテに対して、堅実でまとまりのいいヤノフスキ。
オーケストラは、渋い光沢がノーブルで気持ちいいので引き分け。
指揮は少しムラがあるように感じる。2幕の後半くらいから3幕にかけては、青い炎がめらめらと燃え上っているような迫力がある。3幕の前奏曲などは、左上から木管がギュルギュルとうなりをあげていてスゴい。ただ、全体を通すと、メリハリの強いショルティのほうが好きだ。
録音は、自然な広がりのあるヤノフスキ盤がいい。
ジークリンデ:ジェシー・ノーマン
ジークムント:ジークフリート・イェルザレム
フンディング:クルト・モル
ヴォータン:テオ・アダム
ブリュンヒルデ:ジャニーヌ・アルトマイヤー
フリッカ:イヴォンヌ・ミントン
ヴァルトラウテ:オルトルン・ヴェンケル
その他、大勢
ライプツィッヒ放送合唱団
ドレスデン国立歌劇場合唱団
1980年-83年、ドレスデン、ルカ教会での録音。
おでんとツイッター始めました!映画を観に。
PR