飯田橋ギンレイホールで、ヤーノシュ・サース監督の「悪童日記」を観る。
第2次世界大戦末期の1944年、双子の兄弟は、都会から田舎に疎開する。祖母は20年ぶりに戻った娘との再会にも不満顔。双子たちだけが農場に残され、村人たちに魔女とうわさされる祖母のもとで水くみやまき割りなどの仕事をこなしていく。
この双子は、世間と戦うために、独自のやり方で体力をつけ精神力を磨く。彼らはずっと祖母のところにいるのだが、戦時中ということもあって、波乱万丈。ストーリーは、ネタバレになるので書けない。口当たりは「ブリキの太鼓」に似ていると思う。激しい映画だ。
彼ら、体力はともかく、精神力はじゅうぶんに鍛えられたようだ。
バーンスタイン指揮・ピアノ、ニューヨーク・フィルの演奏でラヴェルのピアノ協奏曲ト長調をを聴く。
最初のムチの音がいい。いままで聴いた録音は、この部分を遠慮しがちに鳴らせていたが、バーンスタインは明快豪快に鳴らせる。こういうやり方こそ、作曲家の意図であったのではあるまいか。それは定かではないのだけれど。
ピアノはオーソドックス。目立たないようにしているのか、それがピアニスト・バーンスタインのスタイルなのか。適度なドランヴはかかっているものの派手ではなく、とてもまっとうであり、慎み深くさえある。2楽章の音の粒立ちのよさは、心に響くものがあるものの、それ以外はまあまあ。というのは、この曲そのものが、あまりピアノに焦点を置いていないからだということもあるだろう。ピアノが映えないピアノ協奏曲。ミケランジェリが弾いても、アルゲリッチが弾いても、ロジェが弾いても、まあそこそこだ、ハッキリ言って。ピアニストのせいじゃない。
ラヴェルは専門家からみて職人的うまさという点では最上級に位置する作曲家であるらしいが、こういう曲を聴くと、技巧のひけらかしの域を出ないと思う。
だから、全体を通してこれは、オーケストラのうまさというものを前に出している演奏だ。普段耳にしない音がたくさん聴こえるから楽しい。2楽章におけるフルート、クラリネットのやりとりは軽妙洒脱。
1958年4月、ニューヨーク、コロンビア30番街スタジオでの録音。
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「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR