ヴラド・ペルルミュテル(ピアノ) 1991年メゾン・ラファイエット城ペルルミュテルは1904年リトアニアに生まれたピアニストで、パリ音楽院でコルトーに師事し、フランスで活躍した。ラヴェルから直接に薫陶を受けたことが有名で、楽譜に書かれていない、音符のスキマの勘所を彼から叩き込まれたという。
このエピソードを昔から聞いていたせいか、ペルルミュテル=ラヴェルというような図式が自然と私の中にできあがっていて、この本場物のラヴェルを楽しみにしていた。まあ、ワルターやクレンペラーがマーラーを演奏した映像を観るみたいな期待と似たようなものか。
この映像は「スカパー」から。放送用の録画である。
収録当時87歳ということもあり、テクニック的にはさして期待はしかなったが、聴いてみると危なげがない。というよりも実に自然に、あたかも腕のいい職人が蕎麦を打つような感じで軽やかに打鍵している。生まれたときから当たり前に鍵盤を叩いている感じだ。そりゃ、アルゲリッチみたいにキーンと冴えた技巧は望めないものの、聴いていて不安感はない。
87歳でたいしたものである、私ならばあの世であるか寝たきりであるな。
この曲は、深い夜の神秘的な靄のような雰囲気のある音楽だが、彼はそういった霊感を強調するのではなく、重厚な低音を基調として、やわらかい色彩的な触り心地を味わわせてくれる。暖かく、やわらかい感触のラヴェルである。
それにしても、このピアニスト、曲の最初から最後まで(正確にいうと、演奏の終わってからしばらくしても)金魚みたいに口をパクパクさせてピアノを弾く。それは、演奏しているあいだじゅう、ずっととぎれなく続いた。
それはまるで、老人がコタツで正月の餅を咀嚼しているかのようであった。★音楽blogランキング!★にほんブログ村 クラシックブログ無料メルマガ『究極の娯楽 -古典音楽の毒と薬-』 読者登録フォーム
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