松岡修造の日めくりカレンダーが、何故か拙宅にある。
せっかくなので、なるべく毎日めくり、修造の言葉をかみしめることにしている。
やたらと勢いがいい。見た瞬間、なるほどと独りごち、人生こうありたいものだと考えずにはいられない。
どれも正論である。マルクス・アウーレリウスの説教みたいだ。だから、その日の気分によっては持て余すことも少なくない。
3日の言葉。「崖っぷち、だーい好き」。
ピンチのときほど、自分の想像を超える力を発揮できる。とのこと。
8日の言葉。「苦しい時ほど、笑ってごらん」。
「笑顔でいれば、自分も、周りの人も明るくなれると信じているから」。
18日の言葉。「自我を捨てろ。雪ダルマになれ」。
雪ダルマは誰かを楽しませるために、自我を捨て、じっとたたずんでいる。だから光輝く。
さすが松岡、いいことを言う。元気なうちは有効だ。ただ、疲れているときに見ると、余計に疲れることがマイナスになることもある。
けれどもう少し、付き合っていこうと思う。
ユジャ・ワンのピアノ、ドゥダメル指揮ベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団の演奏で、ラフマニノフのピアノ協奏曲3番を聴く。
結論から言うと、これはかなりの名演である。
いままでこの曲における私的ベスト3演奏は、ホロヴィッツ/オーマンディ、アシュケナージ/オーマンディ、コラール/プラッソン、次点はアルゲリッチ。
ホロヴィッツは別格だから不動。なので今の気分だと、このワン盤は2位、あるいは3位に入ってくる。(異論はあろうが、この曲においては、作曲家自身の演奏よりもホロヴィッツ(特にライナー、オーマンディ盤)のほうが優れていると思う。録音の善し悪しを考慮しても)。
テクニックの冴え、適度なエグさ、おおいに感傷的なところ、じつにストンと腑に落ちる。
彼女がのっぴきならないテクニシャンだということは、何枚かのディスクで知っていた。このケレン味たっぷりの曲に対して、堂々とテクニックをひけらかす。ここまでやられるとグウの音も出ない。
テクニックだけではない。2楽章における、濃厚なロマンティシズムもかなりのものだし、3楽章の最初のころのグリッサンドのエロティシズムもいい。
ドゥダメルの指揮も気が効いている。3楽章のラストに向かっての煽り方はとても効果的であり、テンポの変化に工夫がみられる。
彼の演奏はマーラーやチャイコフスキーを聴いたが、世評よりも大人しいと感じていた。だが、この演奏では才気煥発、はち切れんばかりのエネルギーが漲っている。
ラストの迫力は鳥肌もの。
生で聴いていたならば、自分の帽子がどこにあるかわからなくなるだろう。
2013年2月、カラカスでのライヴ録音。
休憩。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR