「ここで生きているとすれば、もうよく慣れていることだ。またよそへ行くとすれば、それは君のお望み通りだ。また死ぬとすれば、君の使命を終えたわけだ。以上のほかに何ものもない。だから勇気を出せ」(第10巻22)。
スヴェトラーノフ指揮スウェーデン放送交響楽団の演奏で、マーラーの交響曲9番を聴く。
テンポは全体を通してゆっくり目。
1楽章29分19秒。
2楽章18分8秒。
3楽章12分37秒
4楽章24分45秒。
トータルで85分弱かけているから、ジュリーニ指揮シカゴ交響楽団の演奏と、テンポは似ている。
録音がややデッドなので、音色が若干潤いに欠けるきらいはあるものの、堂々とした演奏である。
あまり大きな変化はみせないが、ところどころの味付けがなかなかおいしい。1楽章はむろん、弦楽器を中心に滔々と流れるが、オーボエ、クラリネット、ファゴットが枯れた味わいをみせており、「人生に疲れ果てた」マーラーの心境を率直に吐露しているかのよう。
終楽章は、この演奏の白眉。逆説的ではあるが「疲れ果てた」マーラーがなんと生き生き描かれていることか。件の2度目のファゴットはじつに生々しい。
オーケストラの配置は、先日に聴いたシノーポリの演奏とは異なり、ストコフスキー・スタイルをとっている。右からぐいぐいと低弦の圧力が迫りくる。やはり、この配置もいい。
スヴェトラーノフは2002年に亡くなっているから、これは最晩年の演奏記録といえるだろう。
私は長らく彼をツマラナイと思っていたので、あえて聴いてこなかったが、ここのところ少し聴き始めている。主に晩年の演奏。オーケストラのドライヴがとてもうまい指揮者であるようだ。
いまさらであるが、それがディスクを聴く意味のひとつ。
2000年1月21日、ストックホルム、ベルワルド・ホールでのライヴ録音。
休憩。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR