山﨑武也の「一流の上司道 仕事の妙味を茶の心に学ぶ」を読む。
著者は、茶道家にして経営コンサルタントという少し変わった肩書を持つ。彼の本を読むのは2冊目であるが、かなりまっとうな考えをもつ常識人だと感じる。
「茶道ではカタチを極めて重要視している。カタチができていないと、ココロが入っていく場所がないからだ。カタチがきちんとできれば、自然にその中にココロが入っていくような仕組みになっている」。
「挨拶は人間と人間が平等な立場で、お互いに交わすものである。相手が目上であったり目下であったりするという理由で、丁寧さが変わるというのは、人間社会の根本的なルールに反する」。
「浮浪雲」にも似たような場面があることを思い出した。心の強さはよい姿勢から、というようなセリフだったと記憶する。あれは茶道からきていたのか。
シノーポリ指揮フィルハーモニア管弦楽団の演奏で、マーラーの交響曲9番を聴く。
シノーポリはこのオーケストラとマーラーの交響曲全部をDGに録音しているわけだが(「大地の歌」は後年にドレスデン・シュターツカペレと録音)、とびとびにしか聴いていない。
2,5,6,7,8は聴いた。7番と8番の演奏にいまひとつピンとこなかったのでしばらく敬遠していたが、この9番は面白かった。とても。
編成はヴァイオリンの対抗配置。それが随所に生きている。第1から第2に引き継がれていくところ、あるいは第1と第2が呼応しながら鳴るところ。作曲された年代を鑑みれば、この配置を想定して書かれたことは自明かもしれない。
ただ、逆にヴィオラとチェロの響きが遠く薄い。低弦がゴリゴリいうのを聴きたいという向きには残念だろう。しかしそれでもなお、ここでの対抗配置は魅力が大きい。
シノーポリは、他のマーラーでもこの配置だったか知ら?
あとこの演奏の特徴は、細部が明確に聴きとれるところ。いままでいくつもの9番を聴いてきたが、初めて聴くような音がワラワラと出てくる。こんなところにクラリネットがファゴットがヴァイオリンが。どの楽章もほぼまんべんなく。じつに楽しい。
これはもちろん指揮者の采配によるものだと思うが、フィルハーモニア管弦楽団のバランス感覚もものを言っているように思う。各パートの音の強さのバランスだけではなく、明るすぎず暗すぎない或いは重すぎず軽すぎない音色。
1流のオーケストラといえど、なんらか突出したパートがあるものだが、このオーケストラはどの楽器も同じくらいの力量であるかのように聴こえる。
シノーポリは後年にドレスデン・シュターツカペレともこの曲を録音しているよう。機会があれば聴いてみたい。
1993年12月、ロンドン、オール・セインツ教会での録音。
休憩。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR