メンデルスゾーン 「八重奏曲」 アカデミーのメンバー白石一文の「ほかならぬ人へ」、二度目を読む。
これは、裕福な家庭に育ったものの平凡な若者がキャバクラ嬢と結構し、いろいろな試練を経験していく恋愛小説。
印象に残ったくだりはここ。
「自分が好きだと、さまざまなことに集中することができる。将来の夢や目標に向かって地道な努力をしてもいいし、趣味や娯楽に熱中してもいい。誰かに好かれるために、他人の役に立つことをやってもいい。何もすることがなくたって大好きな自分のことを考えていればいい」
自分を好きなことが普通なことなのだろうか。著者は自分がそうではないと訴えているように思える。自分が好きな人は、それだけでじゅうぶんにトクをしている。
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズのメンバーによる、メンデルスゾーンの「八重奏曲」を聴く。
これは明るくて爽やかな演奏だ。ソロ・ヴァイオリンはじゅうぶんになめらかで美しく(ズスケほどではないにせよ)、楽天的によく歌っている。よく晴れた日曜日の朝にふさわしい。
この演奏での白眉は、3楽章のスケルツォだろう。
弱音器の効果をじゅうぶんに生かした幻想的な雰囲気と、速めのテンポがなにか「真夏の夜の夢」の速い場面を思わせる。
合奏は完璧といってよく、なんともすがすがしい。メンデルスゾーンのスケルツォは、やっぱり素晴らしい。
とくに、最後の2楽章はぜひとも聴くべき内容だと思う。
ヒュー・マガイア
ネヴィル・マリナー
アイオナ・ブラウン
トレヴァー・コナー(以上Vn)
スティーヴン・シングルズ
ケネス・エセック(以上Va)
ケネス・ヒース
デニス・ヴィゲイ(以上Vc)
1967年6月、ロンドンでの録音。
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