メンデルスゾーン 八重奏曲 ズーカーマン指揮 セント・ポール室内管チェーホフ(浦雅春訳)の「かわいいひと」を読む。
途中まで読んだところ、主人公の女をただの淫乱かと思っていたが、後半でそれが誤解だったことに気付いた。申し訳ない。
人間のぬくもりを常に欲する女の自然な感情は、まさに「かわいい」。
波乱万丈の半生を端的に綴っているところは、さすが短編の巨匠。
ズーカーマンがセント・ポール室内管を振った、メンデルスゾーンの「八重奏曲」を聴く。
メンデルスゾーンが16歳のときの作品で、当初の編成は複弦楽四重奏になっているが、彼自身はさらに若いころに書いた「弦楽のための交響曲」のようなイメージで演奏されることを望んでいたという説もある。
とはいえ、先日に聴いたズスケ(ベルリンSQ+ライプツィヒSQ)による超絶的なヴァイオリンを聴いてしまうと、どうしても「八重奏」のほうに分があるような気がしてしまう。あれ以上の演奏を、ちょっと想像することが難しい。
そんな懸念を抱きつつ、このズーカーマン盤を聴いたわけだが、よかった。ズーカーマンがヴァイオリンを弾いているのかは不明だが、とても明快でスッキリとした演奏だ。もったりしたところがなく、スリムなフォームが曲に合っている。
各声部のバランスは絶妙だし、アンサンブルの精度も高い。うまくコントロールさせている。
好きなスケルツォは、速めのテンポがよいし泡立つような高揚感がうまく出ていて楽しいが、長い1楽章がじつに美しく巧みに構成されており、ここが一番の聴きどころかもしれない。
1983年10,11月、セント・ポールでの録音。
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