ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」 ロストロポーヴィチ(Vc) 小澤指揮ボストン交響楽団永井龍男の「杉林そのほか」を読む。
娘二人を嫁にやってもてあましている老夫婦。なにかと理由をつけて娘と合うことを楽しみにする妻。それを横目で観ながら感慨にふける夫。
上の娘が家を出るときの会話がいい。
娘「永い間、ほんとにありがとうございました」
父「どうも、なんのおかまいも致しませんで」
淡々とした振る舞いがいい。日本的な情緒を感じさせるところ、まるで小津安二郎の映画を観ているような風情がある。
ロストロポーヴィチのドヴォルザーク「チェロ協奏曲」を聴く。
「これが最後のドヴォルザーク」と宣言して録音したことで有名。
演奏はカラヤンやジュリーニと録音したものよりも肩の力が抜けており、全体的に余裕が感じられる。そのぶん、ちょっとスリムな弾きぶりになっているようだ。テクニックは万全。
小澤のオーケストラは、チェロにぴったりと寄り添っており、伴奏の役目をきっちりと果たしている。ホルンの響きが美しい。全体的には、相変わらず良くも悪くも小ぶりな楷書書き。2楽章における細やかさは見事。終楽章のヴァイオリンソロは若干硬めだが気迫がある。
とはいえ、ロストロポーヴィチが録音した数ある録音のなかでは、おおらかでかつ情熱的なジュリーニ盤にとどめをさしておいたほうがよかったのじゃないかと思う。
1985年12月、ボストン、シンフォニー・ホールでの録音
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