マーラー 交響曲第4番 ショルティ指揮シカゴ交響楽団 カナワ(S)「小泉八雲集」から「守られた約束」を読む。これはスゴい話。
遠くにある生まれ故郷を訪ねるために旅立った武士が、約束の日に帰ってくる。落ち着かない様子に不審を抱いた義兄弟が話を聞いてみると、とんでもないことが起こっていた…。
義理と人情の重さが、わずか5ページのなかにギッシリ詰まっている。二段落ちラストの切れ味はすさまじく、名作ぞろいのこの本のなかでも、もっとも印象に残る短編。
ショルティのマーラーを久々に聴く。これはシカゴとの録音。
マーラーの4番は、打楽器がドカドカ鳴り金管が咆哮する音楽ではないから、ショルティにはちょっと不向きのような気が昔はしたが、こういう音楽もそれなりに、というかじゅうぶん上等に演奏する。なんて、こんな言い方はショルティに失礼である。一言でいえば、繊細で、透明感をもつ演奏だ。
シカゴ交響楽団の優秀さの要因として、しばしば金管セクションのレベルの高さを指摘されることがあるが、実は弦がすばらしい。メタリックでひんやりとした響きはこのオーケストラの魅力のひとつであるけれど、その基調をなしているのは弦楽セクションであるといっていいと思う。ピンと張りつめたような緊張感のあるアンサンブルから生み出される輝かしい響きが、ユニークで素晴らしい。
この4番ではそのシカゴの弦のおいしさをじゅうぶんに満喫できる。2楽章ではヴァイオリンが硬質な響きにときおりポルタメントをかけていて、なんだか不思議な味わいがある。辛いんだか甘いんだか。3楽章は、この演奏の白眉。ヴァイオリンの不思議甘辛演奏もかなりいい線をいっているが、ここではチェロが主役級といっていいだろう。合奏の見事なこと。鋭利な刃物のような妖しい光を放ちながら朗々と歌い上げる。硬くて肌理の細かい音色がいい。細かな音でありつつ、圧力が強いから、出番がきたらいつも最前線という感じだ。
キリ・テ・カナワの歌唱は、しっとりと落ち着いたもの。大人のメルヘンのような歌を聴かせる(エロな意味ではない)。
1983年8月、シカゴ、オーケストラ・ホールでの録音。
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