マーラー 交響曲第4番 ケーゲル指揮ライプツィヒ放送管弦楽団、他冒頭の鈴の音から引き込まれる。
「シャンシャンシャン」、ではなく、「リンリンリン」といった、可愛らしくも毅然とした音。
この凛とした鈴の音は、演奏の全体を象徴した音だといえる。
音色に対しての感覚的な鋭さが、この演奏の基盤になっている。1楽章のラッパの悲しげながらも温かみに包まれた音、2楽章の失望感たっぷりのかさついたハープの音。3楽章のなんとも楽しげなホルンと、優しくたゆたう弦楽器。
それぞれの場面で、さまざまな楽器がみんなそれぞれ違った色の衣をつけて登場する。時には、普段聴こえない音が現れたりして、新鮮な驚きもある。
テンポの流れは、あまりなめらかではない。急に速度を落とすシーンがいくつもあって、それはとても濃厚な表情をつけるのに効果的だが、流れを停滞させる一因にもなっている。
でもそれは意図的にやっているのだろうことは想像できる。独特の、退廃的な色気を感じさせる。
テンポは全体的にゆっくり目であり、前にずんずん進んでゆくというよりは、よそ見をしながらのんびりと歩いているような、好奇心たっぷりの悠揚さがある。
上を見れば広い青空、そこにぽっかり白い雲があったり、薄い月が見えたり。うつむいてみれば何の変哲もない石ころがごろごろ、雑草も生えているし、黄色い小さな花も咲いているというような、さまざまな登場人物がいる。
それは実は、クラリネットだったり、ヴァイオリンだったり、ティンパニ
だったりする。
セレスティナ・カサピエトラのソプラノも、可憐な花のひとつとしてオーケストラに溶け込んでいる。
少しユニークだけど、心にしみいるいい演奏であった。
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