ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲 スナイダー(Vn) メータ指揮 イスラエル・フィルロバート・B・パーカー(菊池光)の「初秋」を読む。
これは、私立探偵スペンサーが、ある依頼を発端に自閉症気味の少年をひきとることになり、彼の教育をしながら事件を解決してゆくというハードボイルド小説。
この探偵は、チャンドラーの流れをくむような所謂正統派。腕っ節は強くて、冷静で、ときに情にもろい。
この小説の読みどころは、そんな彼が手取り足取りで少年を教育するシーン。食事のマナーから、ウェイト・リフティング、ジョギング、大工仕事、読書、バレエ、そして酒の飲みかたまで、親切に丁寧に教え込む。心身ともに鍛えて、少年の将来の夢を導き出してそれに取り組ますよう段取りをするくだりは、泣ける。
ラストは圧倒的な切れ味で「悪」をやっつけるわけだが、強すぎてあっけない感はある。
ニコライ・スナイダーによるベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」を聴く。
ど真ん中ストレートの正攻法の演奏。
音色はなめらかで美しく、メリハリをはっきりとつけている。要所でポルタメントを効かせる味がいい。伸び伸びと弾いていて、この曲の大きなスケールに負けていない。
カデンツァは1,3楽章ともにクライスラー。
メータのオケは盤石。
イスラエル・フィルの弦がなんとも美しい。それは2楽章に顕著に現れる。弱音器を使ったヴァイオリンの響きは儚くて夢心地。そして抑えめのファゴットの佇まいがいい。
おそらく対抗配置によるものらしく、ときおり右からヴァイオリン群が切り込んできてハッとする。
それにしても、メータの指揮は堂に入ったもの。先日聴いたズーカーマンとの演奏でも思ったが、この曲を振らせたら現役指揮者のなかでおそらく最強ではないか。
2005年7月、テル・アヴィブ、ザ・フレデリック・R・マン・オーディトリアムでのライヴ録音。
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