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"人生の救い"、東京SQ、"弦楽四重奏曲第14番"

2012.12.24 - ベートーヴェン
 
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ベートーヴェン 弦楽四重奏曲全集 東京クァルテット



車谷長吉の「人生の救い」を読む。

これは、朝日新聞の土曜版「悩みのるつぼ」という、人生相談コーナーの連載をまとめた本。
著者の回答は、解説の万城目学が言うように、ことごとく相談を「殺して」いる。
著者は「物心ついた時から鼻で呼吸ができ」ない身体障害者であるから人並み以上に苦労をしてきたということで、結局人生には「救いがない」と、だいたいの相談を一刀両断にしている。

その快刀乱麻ぶりは痛快ではあるが、まとめて読むと正直言って、いささか飽きる。
月1程度の連載がちょうどいいのかもしれない。










東京クァルテットによるベートーヴェンをまた聴く。

弦楽四重奏曲14番をベートーヴェンの最高傑作であるとする人は、私の知る限り少なくない。
15番が5楽章、13番が最終的に6楽章、そしてこの曲が7楽章ということで、規模からしても内容からしてもこの作曲家の頂点としているわけだ。

好きか嫌いかといわれれば好きであるが、やや凝りすぎているような気がしなくもない。
ただ、いくぶんとっつきづらいこの音楽は、聴きこんでいくうちにだんだんとその深い味がわかってくる。その「だんだん」の過程が気持ちいい。
ベートーヴェンの傑作のひとつであることは疑わない。

その音楽を、東京SQは、ひたむきでありながら、自然な姿勢で演奏しきっている。肩に力が入りすぎていない。各弦楽器は明晰に聴こえてき、前回も言ったけど、冬の朝の空気のようにスウッと澄んでいる。トリルはきれいに粒だっており、間の取り方が相変わらず絶妙だ。これがこの四重奏団の持ち味といえる。

バリリやラサール、ズスケなどいい演奏が多い曲だが、この録音も記憶にとどめておきたい。



ピーター・ウンジャン(ヴァイオリン)
池田菊衛(ヴァイオリン)
磯村和英(ヴィオラ)
原田禎夫(チェロ)


1990年12月、91年4-6月、プリストン大学リチャードソン・ホールでの録音












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Comment

鍵泥棒のメソッド - neoros2019

昨日、テレビで地デジ、BS、CSともに何も見るものが無いということで妻が自分の引き出しから
なにやらDVDを差し出し邦画『鍵泥棒のメソッド』なるものを見る羽目になりました。
半コメディータッチの内容だったんですが、この映画のストーリーの重要なキーになる音楽が
この14番の第1楽章でした。
メロディーが流れたときに、ベートーヴェンの四重奏であることに当たりはつけたんですが特定できずに、早速ズスケで10番から15番までの緩徐楽章をピックアップ試聴しましたが判明できずに困惑している過程で、妻がスマホで検索して
「14番だってよ!」との隣の部屋から声掛けがあった次第です。
こんなキッカケがないとベートーヴェンの四重奏に手を伸ばすこともなかったのでいい機会となったようです。
二十五年以上前に購入した井上和雄著のベートーヴェン闘いの軌跡・弦楽四重奏が語るその生涯なんて久しぶりに読んでいます。
2016.05.07 Sat 18:03 [ Edit ]

映画音楽にしては渋すぎます。 - 管理人:芳野達司

『鍵泥棒のメソッド』を存じませんが、ベートーヴェンの14番を挿入するとはスゴイですね。生半可な映画ではないのでしょうね。
ベートーヴェンの後期は、ズスケがいいですね。ほかにも、ブダペストやボロディン、東京あたり優れていますが、ズスケは最高峰のひとつじゃないかと思います。
井上和雄著のベートーヴェン、興味深いですね。
2016.05.08 22:05
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