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"ウイーン・フィル音と響きの秘密"、C・クライバー、"7番"

2012.12.09 - ベートーヴェン
 
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ベートーヴェン:交響曲第5&7番 クライバー指揮ウイーン・フィル




中野雄の「ウイーン・フィル音と響きの秘密」を読む。

印象的なのは、著者がウイーン・フィルのクラリネット奏者であるオッテンザマーに聞いたという、含蓄深い話。

「オーケストラが醸し出す音色はね、そのオーケストラが本拠地としているコンサート・ホールの響きが造り出すものなんだよ。そのホールが持つ固有の鳴り方ですね。ウイーン・フィルを例にとれば、1869年に出来たムジークフェラインの大ホールでいつも弾いている。リハーサルも本番も、いつもあそこです。だからわれわれは、あのホールでいちばん良い音のする奏法を工夫して、自然に身につけてしまいました」。











ウイーン・フィルつながりで、カルロス・クライバーのベートーヴェン7番を聴く。

これはLP時代から愛聴しているディスク。
いわゆる「ウイーン・フィルらしさ」を求めたいとき、クラウスのシュトラウス(リヒャルト、ヨハン、ヨゼフ)や、クナッパーツブッシュのブルックナー、あるいはフルトヴェングラーのベートーヴェンや、ワルターのモーツァルトをとるといった選択があるが、録音の良さを含めて、私はこの盤をとりたい。年に一度はもそもそと取りだすのだ。

柴田南雄の解説によれば、管楽器を倍増して挑んだというこの録音、確かに強奏時の金管楽器のマッシヴな響きにはちょっと圧倒されるものがある。トランペットとティンパニとの音の溶け具合が抜群である。ウイーン・フィルならではの音色と言ってしまおう。

クライバーの7番では、後にコンセルトヘボウやバイエルンと録音したものもあるけれど、このウイーン盤は、2楽章のラストのピチカートといい、対抗配置といい、クライバーがやりたかったことがもっとも伝わってくる録音だと思っている。
 


1976年1月、ウィーンでの録音









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Comment

無題 - Yuniko

こんばんは。
中野雄の「ウィーン・フィル 音と響きの秘密」は私も読みました。とてもおもしろい本で、何度も読み返しています。
私は「よい演奏家は、そのステージに接した時の思い出(というか演奏の印象)がいつまでも残る」「完璧なリハーサルはむしろ有害」というくだりが印象に残っています。なるほどなあとうなずけるところも、いくつかありますね。
コンセルトヘボウが、某イタリア人シェフを迎えて以来、歌謡性優先になって響きが変わってしまった話や、アメリカ系のレーベルがクラシック部門をことごとく店じまいしてしまった話は、ショッキングでした。
巻末のウィーン・フィル名盤あれこれも重宝しています。
ただ、マゼールが悪者(馬鹿者)扱いなのが納得いかないですが。マゼールが標準音高にこだわるあまりにウィーン・フィルとケンカになり、国立歌劇場の総監督を任期半ばで辞任した話(私はこれはガセネタではないかと思っていますが)や、「利口な指揮者=プレヴィンやラトル、ハイティンクは、そこらへんを心得ていて、ウィーン・フィルの持ち味を生かして自分の望む音楽を実現している(つまりマゼールは馬鹿)」という話など、「ちょっと、それはないだろ?」という感じもあります。

カルロス・クライバーとウィーン・フィルのベト7は、高校時代のクラシック好きの友人がベタホメしていました。
私はと言えば、コンセルトヘボウとのLD(過去メディア)を20年近く前にCD店の大画面テレビで視聴し、「名演だ!よし、これを買おう」と思ったきり、いまだに購入していません。しばらく前に(たしか去年の春)、NHK-BSでクライバーの映像が放映された際に、バイエルン国立管弦楽団との第4&第7を録画しました。なかなか視聴する時間がないのが残念ですが。

そういえば思い出しましたが、1979年頃のたしかレコード芸術の別冊で、文中にも出ている柴田南雄氏がこのレコードを評して、「私は現代オケでベートーヴェンをやるなどグロテスクと思っているが(柴田氏は、すでに70年代から「モーツァルトやベートーヴェンは作曲当時の編成で演奏するべき」と主張していました)、クライバーは現代オケでありながらベートーヴェンのスコアのイメージを実現させてしまった。すごい指揮者であり、すごい演奏だ」とほめちぎっていました。
クライバーの正規録音のベートーヴェン(第4、第5、第7)は、未聴でありながらも気になる演奏です。

私にとってのウィーン・フィルらしさを感じさせる演奏は、意外な線ですがハイティンクの幻想交響曲です。まだクラシック聴き始めの頃に出会ったディスクですが、それまでに聴いていたカラヤンやベーム、バーンスタインやマゼール、ハイティンクの他のオケとのいろんな曲の演奏(ハイティンクは父が好きでした)と比べて、何とも気品ある音&演奏(曲が「幻想」なのに)に聞こえたのです。思えば、これが私のウィーン・フィル初体験でもありました。以来、すりこまれてしまっています。
2012.12.13 Thu 00:02 [ Edit ]

Yunikoさん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

中野雄の「ウィーン・フィル 音と響きの秘密」は読みごたえがありますね。シュナイダーハンがバリリの前のコンマスだったことや、世界最古のオーケストラがデンマーク王立管弦楽団だといった小ネタもまじえつつ、オーケストラというもののひとつの本質を追究した読み物だと思います。

コンセルトヘボウの件は、某イタリア人が悪者になっていますね。私はけっこう好きな指揮者なので、なんともいえないところですが、実際に音が変わったかどうかはいまひとつわかりません。

マゼールとショルティは相変わらずボロクソに言われていますよね・・・ふたりとも好きな指揮者なので、このあたりは軽く読み飛ばしてしまいました。「マゼールはアメリカ人だからピッチが違う」とか言ってますけど、彼はアメリカ人というよりはコスモポリタンな人物ですし。このあたりの偏見に満ちた見方が、ある意味でウイーン・フィルの性質を形作っているのでしょう。

カルロス・クライバーとウィーン・フィルのベト7はオススメです。このLPのライナー・ノーツは柴田南雄が書いているのですが、聴くにあたってとても参考になります。クライバーはいくつかの7番の音源を残していますが、どれも、まったく違う演奏です。才気煥発なところはどれもそうなのですが、オケの配置や響きがそれぞれ異なっています。日本公演も、独特の演奏です。

ハイティンクの幻想交響曲、私も好きな演奏です。ことに2楽章がよいと思います。
2012.12.13 17:45
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