ベートーヴェン:交響曲第5&7番 クライバー指揮ウイーン・フィル中野雄の「ウイーン・フィル音と響きの秘密」を読む。
印象的なのは、著者がウイーン・フィルのクラリネット奏者であるオッテンザマーに聞いたという、含蓄深い話。
「オーケストラが醸し出す音色はね、そのオーケストラが本拠地としているコンサート・ホールの響きが造り出すものなんだよ。そのホールが持つ固有の鳴り方ですね。ウイーン・フィルを例にとれば、1869年に出来たムジークフェラインの大ホールでいつも弾いている。リハーサルも本番も、いつもあそこです。だからわれわれは、あのホールでいちばん良い音のする奏法を工夫して、自然に身につけてしまいました」。
ウイーン・フィルつながりで、カルロス・クライバーのベートーヴェン7番を聴く。
これはLP時代から愛聴しているディスク。
いわゆる「ウイーン・フィルらしさ」を求めたいとき、クラウスのシュトラウス(リヒャルト、ヨハン、ヨゼフ)や、クナッパーツブッシュのブルックナー、あるいはフルトヴェングラーのベートーヴェンや、ワルターのモーツァルトをとるといった選択があるが、録音の良さを含めて、私はこの盤をとりたい。年に一度はもそもそと取りだすのだ。
柴田南雄の解説によれば、管楽器を倍増して挑んだというこの録音、確かに強奏時の金管楽器のマッシヴな響きにはちょっと圧倒されるものがある。トランペットとティンパニとの音の溶け具合が抜群である。ウイーン・フィルならではの音色と言ってしまおう。
クライバーの7番では、後にコンセルトヘボウやバイエルンと録音したものもあるけれど、このウイーン盤は、2楽章のラストのピチカートといい、対抗配置といい、クライバーがやりたかったことがもっとも伝わってくる録音だと思っている。
1976年1月、ウィーンでの録音
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中野雄の「ウィーン・フィル 音と響きの秘密」は読みごたえがありますね。シュナイダーハンがバリリの前のコンマスだったことや、世界最古のオーケストラがデンマーク王立管弦楽団だといった小ネタもまじえつつ、オーケストラというもののひとつの本質を追究した読み物だと思います。
コンセルトヘボウの件は、某イタリア人が悪者になっていますね。私はけっこう好きな指揮者なので、なんともいえないところですが、実際に音が変わったかどうかはいまひとつわかりません。
マゼールとショルティは相変わらずボロクソに言われていますよね・・・ふたりとも好きな指揮者なので、このあたりは軽く読み飛ばしてしまいました。「マゼールはアメリカ人だからピッチが違う」とか言ってますけど、彼はアメリカ人というよりはコスモポリタンな人物ですし。このあたりの偏見に満ちた見方が、ある意味でウイーン・フィルの性質を形作っているのでしょう。
カルロス・クライバーとウィーン・フィルのベト7はオススメです。このLPのライナー・ノーツは柴田南雄が書いているのですが、聴くにあたってとても参考になります。クライバーはいくつかの7番の音源を残していますが、どれも、まったく違う演奏です。才気煥発なところはどれもそうなのですが、オケの配置や響きがそれぞれ異なっています。日本公演も、独特の演奏です。
ハイティンクの幻想交響曲、私も好きな演奏です。ことに2楽章がよいと思います。