ルドルフ・ゼルキン ベートーヴェン選集橋本治の「これで古典がよくわかる 」を読む。
「徒然草」の出だしは、いまなお謎なのだという。
「あやしうものこそものぐるほしけれ」。
これを著者が現代風にすると、「あやしいっていうのが、ホント、ものぐるおしいんだよなァ」。
そうなってはっきりするのが、実はなんだかよくわからない、ということらしい。日本のなかでも1,2を争うほどの有名な古典の書きだしが、実は「なんだかよくわからない」。
これがはっきりした以上、わからないこっちが馬鹿なのだから考えればいいじゃないか、というのが著者の考え。
私の場合、古典で知っている言葉は「いとおかし」と「もののあはれ」くらいだから、どうにもこうにもならない。
じゃあ、考えればいいじゃないか、ということになるわけだが、正直言って、ちょっと萎えるなァ。
ゼルキンのベートーヴェンBOXから、ソナタの1番を聴く。
ヘ短調で始まる主題は、ちょっと肩に荷があるような重さで、ちょっと聴いただけだと初期の作品とは思えない厚みをもっている。
これをゼルキンは、真正面からがっぷり四つで組んでいく。双方ともひけをとらない。じりじりとまんじりともしない様相。手に汗をにぎる。
2楽章はもっと柔らかいが、ここにものっぴきならない雰囲気が漂う。どっしりとした重みのなかから軽やかさが舞うところなど、実に巧み。
3楽章はユーモアの余地がありそうな曲であるが、ここでも生真面目である。面目躍如といったところか。
終楽章は一気呵成に終結に突き進んでゆく推進力がすばらしい。
ゼルキンBOX、まずはソナタから聴いたわけだけど、しょっぱなからの横綱相撲に圧倒されないわけにはいかなかった。
1970年10月、ニューヨーク、コロンビア30番街スタジオでの録音。
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