ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」 ズーカーマン(Vn) メータ指揮ロスアンジェルス・フィルロアルド・ダール(田村隆一訳)の「お願い」を読む。
これは、子供が自宅で夢想にふける話。足のかさぶたをとったり、絨毯を地図にみたてて歩いて遊ぶ。絨毯にはいろいろな模様が描かれていて、なかにはのっぴきならないものも登場する。最後に足をふみはずしてちょっとした恐怖に陥ってしまう。
子供はヒマだけど、ヒマつぶしの達人だ。自分にもそんな頃があったのかと思うとなんだか懐かしい。
ズーカーマンが弾くベートーヴェンを聴く。
彼がこの曲を弾いた最初の録音は、発売日当日に買い求めた記憶がある。LPである。何度も何度も繰り返し聴いて、この曲の良さを教えてくれた大切なレコード。いまも大事に保管している。
あれは77年の録音だから、今日聴いたのは15ぶりの再録音ということになる。
結論から言ってしまうと、これは名演だ。
最初の録音でも艶やかな響きを惜しまずに開陳していたが、今度のはそれに加えて余裕を感じる。ヴァイオリンの音そのものも密度が濃くて、ここぞといった場面でのニュアンスも気が効いている。スケールも大きくなって貫禄たっぷり。
カデンツァは旧盤と同様クライスラー。
メータのオケも好調。ヴァイオリンにぴったりと寄り添うようについていっているし、自己主張も怠らない。ことに終楽章でのティンパニの打ち込みは気合い満点。
シェリング/イッセルシュテットの盤とともに、ずっと聴き続けていきたい演奏である。
1992年1月、ロスアンジェルス、ロイス・ホールでの録音。
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