ベイヌムのベートーヴェン明日は仕事始め。
毎年思うのだが、年末年始の楽しさのピークは大みそかにあるような気がする。それを過ぎると、仕事のことがアタマのなかを徐々に浸食してきて、前日になるともうクタクタである。夕方になるにつれ憂鬱は増してくる。寒いのもつらいし。
そういうときにキクのが、庄野潤三の「プールサイド小景」。昨日、カミサンの実家にいく電車のなかで読んだもの。
繊維会社の課長代理であった40男が首になる。会社の金の使い込みがバレたからである。動揺した妻は、どうしてそんなことになったのかを旦那から聴いてゆく。会社勤めをすることの厳しさと不条理さ。結婚して初めて聴くそれらの話から、いろいろな思いをはせる。
勤め人の悲哀をこれほど端的に描いた小説を知らない。
ココロがくたびれたときは、30分あれば読めてしまうメンタル本を10冊読むよりも、こちらの33ページをお勧めする。
ベートーヴェンの2番は元気のいい曲だ。ベートーヴェンの耳はこの曲を書いている頃から悪くなっていったと言われているが、音楽からはそのような気配は微塵も感じられない。ありあまるパワーが惜しみなく放出しまくっていてまぶしいばかり。
ベイヌムの指揮は豪快に音を鳴らしきっていて、じつに景気がいい。少なくとも昨今のデフレスパイラルのものではあり得ない。どの音符も活気に満ちていて、不安の影は見当たらない。
オーケストラもコクがあってキレがある。おおらかで香りのよい木管と肌理の細かな弦が、たっぷりとした残響のなかに響き渡る。
1954年5月、アムステルダム・コンセルトヘボウ大ホールでの録音。
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