ハンガリー弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲13番を聴きました(1953年9月、パリでの録音)。
「大フーガ」を除いた、6楽章のものです。
ハンガリー弦楽四重奏団のベートーヴェンを、最初からほぼ順番に聴いています。初期もよかったけれど、中期、そしてこの後期に差し掛かり、ますますよくなっているように感じます。
初期の作品が劣っているわけではありません。古典の造形を美しく保った瑞々しい曲は、けっして後期のものにひけをとらない魅力がある。
でも、ハンガリーSQの一見無愛想な佇まいは、後期の作品に、より相性がいいのかもしれません。そう感じます。
この13番、2楽章以降があまりに素晴らしいので、仰け反りました。
ブダペストのような立体感、ライプツィヒのようなまろやかさ、東京のような端正さ、エマーソンのような切っ先の鋭さ、イタリアのような豊潤さ、アマデウスのような生きの良さ、アレクサンダーのような若々しさ、ジュリアードのような透明感、ズスケのような安定感のかわりに、彼らの音楽には朴訥な温かさがあります。
2楽章における、フレーズの繋ぎ目の間が面白い。そして、3楽章のさりげない足取りに、背を正す。4楽章は第1ヴァイオリンのニュアンスのつけかたが絶妙。5楽章カヴァティーナは、一音一音を噛みしめるように弾き切っています。
6楽章の中間部の主題は、この世でもっとも好きな音楽のひとつ。抑揚があり、極めて美しい。
ゾルターン・セーケイ(ヴァイオリン)
アレクサンドル・モシュコフスキ(ヴァイオリン)
デーネシュ・コロムサイ(ヴィオラ)
ヴィルモシュ・パロタイ(チェロ)
パースのビッグムーン。
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