ハンガリー弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲10番「ハープ」を聴きました(1953年10月、パリでの録音)。
ハンガリーSQによる全集を、ズスケSQ、アルバン・ベルクSQのものと、ほぼ並行して聴き進めています。
アルバン・ベルクSQは途中まで聴いたけれど、ちょっと合わない。世評高い演奏であるものの、音程にズレがあるのか、聴いていると頭が痛くなってくる。馴染まないのです。
それに比べると、ズスケやハンガリーは気持ちよく聴くことができます。
好みなのでしょう。
1楽章、アレグロの聴きどころは、チェロの速いパッセージをヴァイオリンが繋いで、音程をだんだんと上げていって、急降下するところでポルタメントを用いる箇所だと思っています。
セーケイのヴァイオリンは、ズスケのように毅然とはしていないものの、いくぶん遠慮がちな繊細さが魅力で、これもいい。いま酒を飲みながら聴いていますが、涙を抑えられません。
2楽章アダージョは、気だるい昼下がり。肩の力が抜けていて、押しつけがましくない合奏が朴訥であって、このあたりがハンガリーSQの魅力なのだと感じます。
3楽章プレストは「運命」の動機が主部を占めます。彼らの演奏は激しすぎない。いたって自然。トリオは生命の誕生のような勢いがあり、手に汗を握ります。
4楽章は変奏曲。一歩一歩、大地を踏みしめるような弾きぶり。音符を味わいつくしているかのようです。彼らのベートーヴェンに対する愛情を感じないわけにいきません。
ああ、また涙が。
ゾルターン・セーケイ(ヴァイオリン)
アレクサンドル・モシュコフスキ(ヴァイオリン)
デーネシュ・コロムサイ(ヴィオラ)
ヴィルモシュ・パロタイ(チェロ)
パースのビッグムーン。
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