インゲ・ボルクのタイトルロール、エレーデ指揮ローマ聖チェチリア音楽院、他の演奏で、プッチーニの「トゥ-ランドット」を聴きました(1955年7月 ローマ、聖チェチーリア音楽院での録音)。
この曲は冒頭からソロと合唱とオケが剛速球の投げ合いをします。そんなヤマが、全曲を通して少なくない。だから、演奏する側は体力勝負でしょう。このようなセッション録音はまだしも、ライヴは大変だと推察。
それはさておき、歌手ではまずモナコのカラフが聴きものです。
この役柄、普段は繊細なカレーラスや、折り目正しいドミンゴを聴くことが多いのですが、声の輝かしさとパワーにおいて、圧倒的といってもいいほどの強さがある。オーケストラの大音響を軽々と超えて届いてくる。
カラフの性格を鑑みるに、ここまで強くなくてもいいのじゃないかと思わなくもないですが、歌としては文句のつけようがありません。
リューという役柄を歌うのに、テバルディほどうってつけの歌手がそうそういるとは思えませんが、やはりいい。渋めに抑えられたトーンは柔らかく情緒たっぷり、劇的緊張感もあり、感情の起伏がとても深い。そして、声に力がある。
ボルクのトゥーランドットは、豪奢のひとこと。
声が太く、たっぷりとした色香が漂っています。貫禄がある。ニルソンやマルトンよりも、重量感はあるかも。じつに堂に入ったドラマティコです。声そのものが魅力的で、ずっと聴いていたくなります。
ティムールの剛毅な歌いぶり、厚みとユーモアの味を兼ね備えたピン・パン・ポンの3人もいい。
エレーデの指揮は、丸みを帯びていて、しなやか。テンポは中庸であり、歌手とのタイミングもぴったり合っています。手だれの技を感じないわけにいかない。甘い旋律は大きな抑揚をつけて歌われていて、それが絶妙で唸ります。
合唱はなかなかワイルド。
録音は1955年のステレオ。広がりがあるし、じゅうぶんにいい音だと思います。
トゥーランドット:インゲ・ボルク(S)
リュー:レナータ・テバルディ(S)
カラフ:マリオ・デル・モナコ(T)
ティムール:ニコラ・ザッカリア(B)
ピン:フェルナンド・コレナ(B)
パン:マリオ・カルリン(T)
ポン:レナート・エルコラーニ(T)
皇帝アルトウム:ガエターノ・ファネルリ(T)
代官:エツィオ・ジョルダーノ(Br)
ローマ聖チェチリア国立アカデミー管弦楽団・合唱団
パースのビッグムーン。
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