ズスケ弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲12番を聴きました(1978年11月、ドレスデン、ルカ教会での録音)。
冒頭の和音を聴いてまず「ああ、ズスケの音だなぁ」と感じます。柔らかくて、コクがあって、響きが精緻。
柔和さと奥行きの深さ、そして緻密さが渾然一体となっています。その印象は、曲の最後まで揺らぐことはありません。
1楽章はマエストーソの序奏からアレグロ。丁寧に、かつ大胆に弾かれています。なんとイキイキしていることでしょう。
2楽章は変奏曲、アダージョで始まります。荘重な音楽です。すべての楽器が素晴らしすぎますが、なかでも、なにげないチェロのフレーズがあまりにも優しくて、落涙。ラスト近くで、ヴァイオリンが上昇していく場面は、あたかも天に昇っていくが如く。
3楽章はスケルツァンド。4名でのピチカートから、チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリンのソロ。音楽は快速に進みます。なめらかで、優雅。繊細でありながらも、芯が強い。中間部においてのズスケのソロは聴きものです。
4楽章はフィナーレ。この曲は、あたかもベートーヴェンの中期の作品を思わせるような快活さがあります。同じ作曲家だから不思議はないかもしれませんが。テンポは相変わらず中庸で、とくに第1主題は強弱の按配が絶妙です。しっくりと腑に落ちる感じ。
全曲を通して、文句のつけようのない演奏でありました。
カール・ズスケ(第1ヴァイオリン)
クラウス・ペータース(第2ヴァイオリン)
カール・ハインツ・ドムス(ヴィオラ)
マティアス・プフェンダー(チェロ)
パースのビッグムーン。
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