ジュリアード弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲15番を聴く(1982年、ワシントン、アメリカ合衆国国会図書館クーリッジ・ホールでのライヴ録音)。
ジュリアードによる後期四重奏曲もあとふたつ。この15番も相変わらず切れ味がいい。
なにしろホールがデッドなうえに、おそらく録り直しはしていないと思われるので、奏者は大変なこのシリーズであるが、それも残り2曲。
出だし、音程がいささか怪しいところはあるものの、すぐに持ち直す。激しくて、切っ先鋭いベートーヴェンである。
件の「リディア旋法による、病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」は淡々としていながらも、じつに孤独な演奏。恐ろしく、艶やか。妖艶に輝いている。こんなに美しい演奏があったのか。
でも、内面は荒れ野原のよう。楽しい、悲しい、痛い、侘しい、こそばゆい、虚しい、夢心地などといった、日常に感ずるものを超越した何かがあるようだ。この曲を作った直前、彼は腸カタルを患っており、それが回復した喜びの音楽と云われているのが、この音楽。
でも、ジュリアードの演奏を聴くと、ことはそんなに単純ではないことを思い知る。お話を鵜呑みにしてはいけない。
憂鬱な日曜日の夜。
この音楽があれば、なんとかやっていけるか。
ロバート・マン(第1ヴァイオリン)
アール・カーリス(第2ヴァイオリン)
サミュエル・ローズ(ヴィオラ)
ジョエル・クロスニック(チェロ)
屋根の上のパーティ。
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