フリードリヒ・グルダのピアノで、ベートーヴェンのピアノソナタ12番「葬送」を再び聴きました(1967年7-8月、ウイーンでの録音)。
この曲を聴いて衝撃を受けたのはグールドの演奏。それは4楽章。ゆっくり目のテンポでもって、あたかも滝の水しぶきのように下降し、華麗に飛び散る音に強く感銘を受けたものです。
それを聴いてしまうとなんだかクセのようになり、他の演奏が物足りなく感じることも。それが原因なのかわからないけれど、何年もこの曲にご無沙汰していましたが、数日前に1楽章の旋律がふとよぎったので、それならばとこのディスクを取り出した次第。
これは、グルダのほかのベートーヴェンと同様に、粒立ちのいい音色が光る、そよ風のように軽やかな演奏。全体的にテンポは速め、くだんの4楽章含めて一気呵成に弾ききっているという感じがあります。衒いのないところは、ベートーヴェンに過剰な幻想を抱いていないと思われ、だからこのピアノにとっつきやすい。
グルダのベートーヴェン、このアマデオのソナタ、そしてシュタインとの協奏曲ともに愛聴しています。
ピアノはスタインウェイ。
門馬直美のライナーノートによれば、3楽章の「葬送」は『ある英雄のための』と記されているものの、誰に向けてのものか不明らしい。当時は葬送行進曲を取り入れたソナタが他にもあったことから、ショパンの先駆けはいくつか存在していたようです。
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