クーベリック指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏で、ベートーヴェンの交響曲8番を聴く。
クーベリックのこのベートーヴェン全集は1曲ごとにオーケストラが違うユニークなもの。それぞれの曲想に合わせてオーケストラを選んだに違いない。
DGのプロデューサーか指揮者の判断か、どちらなのかはわからない。3枚目まで聴いたところ、うまい具合に選んだものだとしみじみ思う。
8番をクリーヴランドとしたのは、小ぶりながらもキリッとしまったリズミカルなこの曲に、セルとマゼールによって鍛えられた筋肉質のオーケストラが合う、との判断だったのだろうと推察する。
たしかにこの演奏においても、弦楽器を始めとして合奏の精度は高く、引き締まった音楽を奏でている。ただ、クーベリックは、そこで終わらせてはいない。ヴァイオリンを対抗配置にし立体的な響きを出すことに加え、ときに木管楽器を前面に立てて臨場感を浮き立たせている。
1楽章は出だしからティンパニの強打が印象的、2楽章でクラリネットのトリルが明快に聴こえるところは面白い。3楽章はファゴットのソロが毅然としていて見事、そしてホルンとクラリネットとの絡み合いがとてもまろやか。4楽章は左右のヴァイオリンが鮮烈。
覇気に満ち満ちた、素敵な演奏である。
この録音から約3年後に、このオーケストラをマゼールが指揮して録音している。その演奏も各パートがクッキリ浮き出ていて面白い。
1975年3月、クリーヴランド、セヴェランス・ホールでの録音。
海へ。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR