ジュリアス・カッチェンのピアノで、ブラームスの「ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ」を聴く。
ブログ友達のyoshimiさんからは、ずいぶん前からこのピアニストを薦められていたのにも関わらず、youtubeで軽く聴く程度だった。CDは持っていたけれど、バラードのみ。いい感触ではあったけれど、ブラームスのピアノ曲にあまり興味を持てなかった。せいぜい、ふたつのコンチェルトを聴くのみ。ところが、この数カ月前にペライアの演奏を聴いて以来「ヘンデル・ヴァリエーション」の虜になり、どうしてもどうしてもカッチェンの演奏を聴きたくなった。
カッチェンのブラームスのこの6枚組ボックス、まだ何曲かしか取り出していないけれども、とても安心して聴いていられる。1962年から1965年の間に録音されているので、彼が30歳半ばから40歳ぐらいまでの記録である。
当時でもブラームスは当たり前に演奏されただろうが、このようにソロ曲を全部入れた例は他にないのじゃないか。質・量ともに、間違いなくブラームスのピアノ曲の包括的な演奏の嚆矢と言えるだろう。
テクニックはもちろん万全、それに加えて適度にブレーキがきいたパッションの温度、日曜日の深夜のような濃いセンチメンタルもじゅうぶん。
この曲の第1変奏は、まるでこれからピクニックに行くような朗らかで軽やかな音楽であるわけだが、そんな楽しみを全開にしたピアノはこれを置いて他に(今のところ)見当たらない。
これを聴いて、ほんのひとときの幸せを感じないでいられるだろうか!
1962年6月、ロンドン、デッカ第3スタジオでの録音。
海へ。
重版できました。
「ぶらあぼ」4月号に掲載されました!PR