ジュリアス・カッチェンのピアノ、ピエロ・ガンバ指揮ロンドン交響楽団の演奏で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲5番「皇帝」を聴きました(1963年12月の録音)。
これは推進力の強い演奏。ピアノもオケも溌剌としています。
まず、冒頭のカデンツァが素晴らしい。音が粒だっているに加え、冬の星空のように煌めいています。適度な重みを保ちつつ、躍動感に溢れている。
その後もカッチェンは好調、いくぶん速めのテンポでもって、ぐいぐいと力強く進んでいきます。フォルテッシモでも音はまったく濁らないばかりか、むしろ柔らかみを増しています。
彼のソノリティは、ブラームスにしろ、このベートーヴェンにしろ、丸い。それに気持ちの良いスピード感が相俟っているところが、カッチェンの魅力だと思います。
ガンバの指揮はイキがよくって、メリハリがよくついている。1楽章の激しいところではホルンを炸裂させ、低弦をゴリゴリと鳴らせていたり、わりといきり立っています。そのいっぽう、おとなしい場面ではしっとりと丁寧に音を紡ぎあげている。2楽章の弱音器をつけた弦楽器がこよなく美しい。
この時期のロンドン交響楽団は状態がとてもいい。モントゥーの頃だろうか。
パースのビッグムーン。
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