エマーソン弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲12番を聴く(1994年3月、ニューヨーク、アメリカ文芸アカデミーでの録音)。
これは、切っ先鋭い演奏。
この曲のディスクは、わりと多くを聴いてきたつもり。でも、こんなに峻烈な演奏は他にあったかな。
1楽章は中くらいのテンポ。鋭角的であるが、ところどころにポルタメントをきかせているので、音楽に広がりを感じる。
2楽章は、いくぶんゆっくり目。それぞれの奏者が、とても注意深く、丹念に弾いていることが手に取るようにわかる。ベートーヴェン晩年の深さを、じっくりと味わった演奏。テクニックの点でも文句のつけようがない、というか、最高レヴェルじゃないか。
3楽章は、中くらいのテンポ。躍動感が漲る。ただ、中間部は、恐ろしく速い。悪夢を見るような怖さがある。
4楽章は、わりと速いけれども、ヴァイオリンが丁寧に歌っているのでせかせかした感じはしない。チェロの独奏が毅然としていていい。合奏としても緻密で、隙がない。
ユージン・ドラッカー(ヴァイオリン1)
フィリップ・セッツアー(ヴァイオリン2)
ローレンス・ダットン(ヴィオラ)
デヴィッド・フィンケル(チェロ)
パースのビッグムーン。
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