イタリア弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲12番を聴く(1968年6月、スイスでの録音)。
これはベートーヴェン晩年の作品。
彼の作品群を、初期・中期・後期と便宜的にわけることがある。
たとえば、ピアノ・ソナタは26番と27番とを比べると、趣の違いは歴然としているように思える。27番のほうが、一段深いように感じないわけにいかない。
交響曲も、8番と9番では異なる。これはまあ、9番がかなり特殊なせいもあるのだけれど。
でも、弦楽四重奏曲はそれほど明確ではないように感じる。10番「ハープ」と11番「セリオーソ」が、あたかも中期と後期との橋渡し的な性格をもっており、それぞれ深みがあるから。ついでに言うと、4番は初期に位置付けられているけど、この曲の深さは中期を飛び越えて後期に迫るものがある。
ただ、作曲年代は大きく違っている。「セリオーソ」が作られた14年もの後に12番は作曲されている。この14年は何を意味するのか、定かではない。この12番は、それ以降に続く、人類の至宝といっていいほどの輝きを放つ音楽たちの、序曲的な意味合いもあるように思っている。じゅうぶんに内省的でもある。
なかでも、2楽章アダージョは、この曲の大きな聴きどころ。きわめてゆっくりとした変奏曲は、雄大であり深遠。4楽章の、ボリュームたっぷりの音も魅力。
イタリア四重奏団は、密度の濃い音を駆使して、とても丁寧に弾いている。締めくくりは鮮烈。
パオロ・ボルチャーニ(ヴァイオリン)
エリサ・ペグレッフィ(ヴァイオリン)
ピエロ・ファルッリ(ヴィオラ)
フランコ・ロッシ(チェロ)
図書館。
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