ジュリーニ指揮バイエルン放送交響楽団・他の演奏で、シューベルトのミサ曲6番変ホ長調を聴く(1995年2月、ミュンヘン、ヘラクレスザールでの録音)。
この音楽は、1828年6月から7月にかけて作曲されたと云われている。シューベルトが亡くなったのは1828年11月19日だから、最晩年の作品である。
ちなみに、この時期に作曲された主な作品は、弦楽五重奏曲が1828年の夏、「白鳥の歌」が1928年の8月頃、ピアノソナタ19番から21番は1828年9月頃。
よって、管弦楽付きで完成された作品としては、このミサ曲6番が生涯最後の作品と言えるだろう。
しかし、この曲は、上にあげた最晩年の曲にしばしばみられる、慟哭、悲観、諦念、虚無といった要素は薄い。健全、といってもいいかもしれない。言われなければ、最晩年の作品とはわからない。シューベルトの温かいまなざしが浮かんでくるようである。
曲は大きく6つに分かれる。
キリエ
グローリア
クレド
サンクトゥス
ベネディクトゥス
アニュス・デイ
バイエルンのオーケストラとコーラスが、こよなく美しい。フーガを多用しているところは、1827年に対位法を師事したジーモン・ゼヒターの影響なのかもしれない。劇的な効果がある。
それにしても、シューベルトほどの男が死の前年に音楽技法を習うとは、なんということ!
ジュリーニの指揮ぶりはいい。とてもあたたかい。なんといっても、貫禄がある。このような演奏で聴くと、ベートーヴェンの「荘厳ミサ」にも匹敵する威容があるように感じられる。
独唱者たちは、クレドの後半から登場する。彼女らの真摯で清らかな声は曲想にとてもよく合っている。とくにツィーザクの可憐な声が好き。
ルート・ツィーザク(ソプラノ)
ヤルト・ヴァン・ネス(メゾ・ソプラノ)
ヘルベルト・リッペルト(テノール)
ヴォルフガング・ヒュンテン(テノール)
アンドレアス・シュミット(バリトン)
バイエルン放送合唱団
図書館。
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