アマデウス四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲9番「ラズモフスキー3番」を聴く
(1960年5-6月、ハノーファー、ベートーヴェン・ザールでの録音)。
「ラズモフスキー3番」は、ベートーヴェンの中期の弦楽四重奏曲のなかで、最もいきり立った曲だと思う。
中期の傑作群のなかで、ソナタで云えば「熱情」や「ワルトシュタイン」、交響曲で云えば「英雄」あたりが相当し、ということは、まあ暑苦しい音楽ではある。
アマデウスSQはそんなこの音楽を、じつに率直に弾き切っている。勇ましいところはキチンと勇ましく、暑苦しいところは暑苦しいなりに。
1楽章は、快活でスピード感に満ち溢れており、あたかもジェットコースターに乗っているよう。チェロが雄弁なので、音楽に立体感がある。
2楽章もチェロのロヴェットが存在感を示す。重厚なピチカートがこの曲を支配している。
3楽章はスケルツォではなくメヌエット。秋の雲のようにふんわりと広がりのある佇まいを、アマデウスは一筆書きのように端的に仕上げている。
4楽章はアレグロ・モルトのフーガで始まる。速い。各楽器はどれも骨太、そして威勢がいい。愚直に、ガリガリと終結に向かって進む。
ノーバート・ブレイニン(第1vn)
ジークムント・ニッセル(第2vn)
ピーター・シドロフ(va)
マーティン・ロヴェット(vc)
春。
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