アマデウス四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲16番を聴く
(1963年3-4月、ベルリン、ウーファ・スタジオでの録音)。
アマデウス四重奏団のベートーヴェン、最終章。
14番で7楽章という極限にまで拡大した楽章は、この曲で4楽章に戻り(この作品の前に14番は書かれた)、演奏時間も初期並みになっている。このアマデウスの演奏では、約25分。
この曲の4楽章に書きこまれた筆記は有名である。
「ようやくついた決心(Der schwergefasste Entschluss)」「そうでなければならないか?(Muss es sein?)」「そうでなければならない!(Es muss sein!)」。
後世の解釈では、家政婦との給金に関するトラブルによるものとする説や、もっと奥深く謎めいた問いかけとする説があるいっぽう、義理の息子の親権を巡る、カールの母親との問答という扱いというのもある。
このあたりは、余興として楽しもう。昔のことはわからない。なにせ、19世紀前半のドイツの、一作曲家の私生活に関するものであるから。想像して楽しむだけにするのが、適当だ。
さて、このアマデウスの演奏は、これまでの流れ通り、中庸である。鋭すぎず、甘すぎない。前者にはブタペスト(ステレオの方)の先鋭なもの、後者にはバリリのいい意味で古色蒼然とした演奏があり、どちらも格別である。アマデウスのも、じゅうぶんに心がこもっていて、いい。
しかし、ベートーヴェンの音楽も、ここまできてしまうと、演奏の善し悪しは二の次といった感はある。テンポが遅いとか、音が強いとか、そんな瑣末なことに拘泥していられぬほどに奥深い、という思いだ。最後のピチカートなど、たまらない。頑固な人間もこうなるのか。いつも、深い感銘を受けずにはいられない。
ノーバート・ブレイニン(第1vn)
ジークムント・ニッセル(第2vn)
ピーター・シドロフ(va)
マーティン・ロヴェット(vc)
図書館。
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