アマデウス弦楽四重奏団の演奏で、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲13番および「大フーガ」を聴く
(1962年9-10月、ベルリン、イエス・キリスト教会での録音)。
このBOXの構成上、13番と大フーガはCDそのものが分かれているので、おのずと別々に聴くことになる。
13番を通して聴くと、やはり全体の坐りがいい。すっと腑に落ちる。6楽章は、差し替えられたとは思えないほどのクオリティ。まるで最初からあったかのように自然。
「大フーガ」は内容の濃さといい長さといい、単体であってもじゅうぶんな規模があるから、やはり、これは別枠で聴いたほうがいいと思う。
アマデウス四重奏団のこのベートーヴェン全集は、1959年から1963年にかけて録音されている。
最初からほぼ順番通りに聴いているが、録音も初期から後期へと順を追っている。後期になるほど、アンサンブルがこなれていっているように感じる。しっとりとした、きめの細かな響きを各奏者がしっかり奏でており、じつに滋味深い。ときおりみせる装飾音がお洒落。
とはいえ、ベートーヴェンの音楽もここまでくると、深すぎて、演奏の好みなど跳ね返される。どの演奏も、それなりに納得してしまう。演奏者も、よほどの覚悟がないと後期の録音はできないだろうから。アマデウスは真正面からベートーヴェンに対峙している。ケレン味なしのまっこう勝負。
彼らの演奏もまた、この短期間のなかで進化している。
春。
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