ベートーヴェン「英雄」 スイトナー指揮ベルリン・シュターツカペレ村上春樹の「アフターダーク」を読む。初めて手に取る本と思っていたが、途中で読んだことがあることに気づく。やってしもうたが、内容はもちろん忘れているので最後まで読んだ。
ラブホテルの従業員の身の上話がなまなましい。若い時の過ちによって、家族を捨てて暴力団から逃げ惑うはめになる女。身を隠すには、世間に顔を見せることのないラブホテルがいいという痛々しい処世。暴力シーンがないからむしろ、暴力の匂いがぷんぷんする。想像するとじわじわ怖い。
なお、別の登場人物がデニーズの「チキン・サラダ」をしきりと絶賛するが、まあこれは、さほど食べたくはならなかったナ。
スイトナーの「英雄」。これも昔聴いたことがあるような気がするが、やはり定かではない。
冒頭の和音から、ベルリン・シュターツカペレの豊満で柔らかい響きがおいしい。きめの細かい泡のようにふんわりとしていて、吹いたら飛んで行ってしまいそうなはかなさがある。たっぷりと空間をとった録音も、そうした効果を上げている。
1楽章のクラマックスは、最初がトランペットによる主題ありで、2回目はなし。ベートーヴェンはトランペットを指定しなかったらしいが、どちらがいいのか、いつも悩ましいところ。片方ありは他の演奏でも聴いたことがあるが、この演奏でも楽しめる。
トランペットがあるほうが自然に感じるけど、なければそれを補うように木管が気合いを込めて吹くところもけっこう好きだ。
1980年6月、東ベルリン、キリスト教会での録音。
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スイトナーのベートーヴェンは、発売当時は確か単発で出ていた記憶があります。その頃は学生だったので、区内の図書館をはしごしてLPを借りまくっていまして、スイトナーのベートーヴェンは5番や6番を聴いていました。
ベルリン・シュターツカペレの素朴でやわらかい音がとてもよくて、録音も素晴らしかったのです。
そうそう、第5はギュルケ校訂版でした。なにが違うのか当時は(今でも)わかりませんでした。
スイトナーのベートーヴェン、全部を聴きたいと思う反面、この種目は競合盤も多いので悩ましいです^^ 最近は、C・デイヴィスとドレスデンのものや、クリップス(缶に入ったもの)などが気になっています。