チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」 ボレット(Pf) デュトワ指揮モントリオール響中沢新一の「鳥の仏教」を読む。もともとはチベット語によって書かれた書物で、制作時期は17世紀とも18世紀とも言われているらしい。
チベットでは「神聖なる鳥」であるところのカッコウをはじめとしたさまざまな鳥たちによって、仏教の教えが説かれている。
農民や牧畜民など一般の仏教徒のために書かれたらしいとの現在の研究の通り、とりたてて難解な文章ではない。だけど、とても簡易なことばで書かれてはいるものの、すうっと入ってくるわけではない。鳥たちのことばの、密度の濃い、ど真ん中ストレートの説教に、読んでいてツラくなることたびたびであった。
ボレットによるチャイコフスキーは実におおらかな演奏。
テンポはゆったりとしていて、ピアノの音色が豊かだ。低い音から高い音まで、にごりのない澄んだ音色が心地よい。
デュトワのオーケストラは精巧なもので、とくに弦のつややかな響きはすばらしい。合奏の整いかたといい、音色のバランスといい、適度に柔らかい録音といい、緻密な水晶の置物のように無味無臭だ。人工的とも言えるかもしれないが、ここまで洗練されたチャイコフスキーは珍しいのじゃないかな。
1987年5月、モントリオールでの録音。
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