オイゲン・ヨッフム指揮 ロンドン交響楽団 魚柄仁之助の「冷蔵庫で食品を腐らす日本人」は、文字通り飽食に明け暮れる日本人へのキラー・パス。
野菜でも魚でも、食べる分だけ買えばいいのに、安かったりするとついつい必要以上に買いこんで、とりあえず冷蔵庫に投入。使い切る前に傷ませてしまい、ゴミ箱行き。油断するとやってしまう。人ごとではない。スーパーや外食産業で大量に廃棄される食物を有効に活用すれば、日本の食糧自給率は改善できる、というようなことを池田清彦も言っていたが、そもそもは無駄に買いこむわれわれの習性が連鎖を生んでいるわけだ。日本の食糧自給率は、2009年現在40%。これをなんとかせねばという大きなこともさることながら、まず家計の心配からだな。
ヨッフムのベートーヴェン7番。提示部を反復しているとはいえ、全曲で44分超かけている。その遅さは後半になりボディー・ブローのようにじわじわと効いてくる。
ことに3楽章のトリオは、たっぷりと遅い。ずっこけそうになるくらいだが、2度目になると違和感はなくなる。スケルツォの速さとの対比としてみれば、これはこれで見識であり、むしろこういうほうがしっくりくるとも言える。
全体にテンポはゆっくり目であるが、フォームはスマート。ロンドン響の湿り気を帯びた音色をもってなお、筋肉質を感じる。終楽章の「タッタカタ」のリズムは明快であり、トランペットとティンパニの溶け合う音が、極めてくっきりと浮かび上がっている。意外とないんだよね。ここだけでも一聴の価値はあると思う。
おおらかであり、かつ丁寧な演奏。
1976年7月、ロンドン、キングズウェイ・ホールでの録音。
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