ベルリオーズ:劇的物語「ファウストの刧罰」 チョン指揮フィルハーモニア管弦楽団、他ジョン・ムーア監督の「ダイハード ラストデイ」を観る。
舞台はモスクワ。おなじみブルース・ウィリス演じるマクレーン刑事が、CIA職員の息子とともにロシアの悪人に立ち向かう。
車やヘリコプターを使ったアクション・シーンは前作と同様。
新味はない。ただ、なにも考えずに観られるところは、ある意味いいところなのかもしれない。
登場人物のロシアの女性が可愛かったことが唯一の収穫かな。
チョン・ミュンフンのベルリオーズ「ファウストの刧罰」を聴く。
これは鮮烈な名演。
チョンの指揮によるベルリオーズは、今まで「幻想」、「イタリアのハロルド」、序曲集と聴いてきた。それぞれ悪くはないのだけど、いまひとつピンとくるものがなかったので、この「ファウスト」もあまり大きい期待をしていなかったのだが、いい意味で裏切られた。
しっとりとした弦による出だしからテノールの朗々たる歌、そしてやがて木管楽器がイキイキと飛び回るところを聴いて、これはいいと確信した。
フィルハーモニア管が絶好調。木管楽器の天空を舞うような軽やかさといい、バランスよくしっかりと土台を支える弦楽器、そして輝かしい金管楽器。どの情景も実にいききとしていて、眼前に迫ってくるようだ。
合唱は質の良い粗挽きのコーヒーのよう。肌理の細やかさよりも勢いと広がりを追求したかのような歌いぶり。男声合唱と少年合唱とが混ざり合うところなんかは、なんとも楽しい。
独唱陣も充実。ルイスの安定したファウストは知性を感じるし、オッターのマルグリートは情感が滴り落ちるよう、ターフェルによるメフィストフェレスは貫禄たっぷり。
オーケストラ、合唱、独唱が三位一体となって、この大作を完璧に近いといっていいくらいに見事に描ききっている。
チョン・チュンフンの、これは代表作といいたい。
アンネ・ソフィー・フォン・オッター(MS)
キース・ルイス(T)
ブリン・ターフェル(BR)
ヴィクター・フォン・ハーレム(BS)
ダーフィト・ニクラス(S)
フィルハーモニア合唱団
イートン・カレッジ少年合唱団
1995年4,5月、1996年6月、バージングストーク、アンヴィル・オーディトリアムでの録音。
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