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ミンコフスキのベルリオーズ「幻想交響曲」

2009.08.22 - ベルリオーズ

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ベルリオーズ「幻想交響曲」 マルク・ミンコフスキ指揮マーラー室内管、ルーブル宮音楽隊


丸谷才一の「猫のつもりが虎」を読む。
上質なウンチク話が17編に味わい深い和田誠の絵、一杯やったあとに寝床で読むヨロコビがある。
全体にホンワカムードだが、ときおり鋭い眼が光る。
「今の日本には、批評のまつたくない藝術がある。しかもそれはあらゆる藝術のなかで最も金のかかるもので、それが未曾有の盛況だし、たぶん全世界的にみても珍しいほどの殷賑ぶりではないか。それなのに批評がないのはまことに不思議な話だ。と言ふとき、わたしは建築批評の不在をなげいてゐるのだ。」
それを読んで思い出したのは、東京の音楽ホール。
ここ20年くらいの間に、芸術劇場やオーチャードホールやトリフォニーホールなどぞくぞくと音楽専用のホールができている。これらによって多くのコンサートを聴く機会が増え、とても重宝している。
でも不満なのは、ホールがビルの中に含まれていること。外からみるとホールなんだか事務所なんだか全然わからない。要するに味がない。
音響面では劣るかもしれないが、その点で渋谷のNHKや上野の文化会館の佇まいのほうがしっくりくる。どうせ浮世の世界を楽しむのなら、見た目でも堪能したいものだ。
丸谷の話とはちょっと離れてしまった。


ミンコフスキの「幻想」は、手兵のルーブル宮音楽隊に加えてマーラー室内管を採用している。
古楽器と現代楽器とをミックスしているわけだが、実際に聴いたところは現代楽器のみを使用しているように感じる。
手兵のルーブル宮にやや色の異なるオケを増強した結果、違和感があるのではと邪推したが、分厚い響きを引き出すことができているし、アンサンブルはキッチリ整えられている。
この演奏の聴きどころは、1楽章の弱音器を用いた弦の美しさと、4楽章で妙にブカブカ主張するバスのトロンボーン。
ことに後者は部分的にユニークであるが、大勢を揺るがすほどの影響はない。要するに、それ以外の箇所については特に新味はない。
「幻想交響曲」は録音の数こそ多いものの、これといった演奏がとても少ない。これだけ手垢のついた曲だから、新味を出すのはいささかやっかいだろう。
決して悪い演奏ではないが「こうじゃなけりゃ!」といった要素は見当たらない。
古楽器演奏を得意とする指揮者がロマン派の曲を取り上げるとき、期待に反してつまらない場合があるが、この演奏もそれに当てはまる。


2002年12月、パリでの録音。
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Comment

無題 - リベラ33

まずコンサートホールの外観について。
まったく仰るとおりです。今や外観でそれとわかるのは東京文化会館、サントリーHくらいですねぇ。比較的関西はコンサートHとわかる建築がありますが、あのフェスティバルHはもう解体されてしまって、今度作られるこのは完全に「ビルト・イン構造」です。
続いて演奏についてですが、曲によって名演の出やすい作品とそうでもない作品がありますねぇ。マーラーの9番とか、なかなか名演揃いのように思います。演奏しやすい曲とかあるんでしょうかねぇ。
2009.08.22 Sat 21:13 [ Edit ]

Re:リベラ33さん、こんばんは。 - 管理人:芳野達司

コメントをありがとうございます。

そうそうビルトインです。サントリーホールは音響もバッチリ内装もグッドですが、強いて言えば周りが高層ビルなのでいまひとつわかりづらいところが難点です。
そういう意味で東京文化会館はかなり満足です。関西のホールにはあまり行ったことがありませんが、京都のコンサートホールはなかなかいい風情でした。
これからホールを設計するのであれば、ビル街ではなく公園のはじっこあたりにおっ建ててもらいたいものです。

「幻想」でいままで満足した演奏は、終楽章のコーダにひねりを入れた、ミュンシュ/ボストン、クリュイタンス/パリ音楽院、小澤/ボストンの来日公演、アバド/ルツェルンのライヴあたりです。
2009.08.22 23:28

無題 - rudolf2006

吉田さま お早うございます

確かに建築に関しては批評がありませんね、言われてみれば、おかしなことですよね〜。コンクリートの打ちっ放しの建築、木の味わいも何にもないですが、いやに持て囃されていますよね〜。
私は日本の風土にあった建築があっても良いのではないかな、と思いますし、あれほどのホールが必要なのかなとも思います。ヴィーンのオペラ劇場、2つだけですが、いずれもヨーロッパの音楽の都に相応しいものですよね〜。そういう建築、ホールができることを願ってやみません。

「幻想」のバストロ、あそこはバスーンも4本一緒に演奏しています、爆〜。私は、マルケヴィッチの演奏、古い演奏ですが、聴いたときにビックリ仰天したのを覚えています。

モダンの楽器でも、ピリオド楽器でも、演奏が面白くないと意味が内容にも思いますね〜。

ミ(`w´彡)
2009.08.23 Sun 08:58 URL [ Edit ]

Re:rudolf2006さん、こんにちは。 - 管理人:芳野達司

いつもコメントをありがとうございます。

建築に関しては批評、利害に絡んでいるから難しいのかもしれません。
東京の建築物については、個々の建物もそうですが街全体の景観がひどいことになっています。日本の風土にあった建築が見当たりませんね。

>「幻想」のバストロ、あそこはバスーンも4本一緒に演奏しています

マルケヴィッチはラムルー管でしょうか? それなら持っているのですが、気がつきませんでした。なにを聴いているんだか^^
古楽器スタイルによる「幻想」はガーディナーとミンコフスキを聴きましたが、どちらも期待はずれでした。吉田秀和推薦のノリントン盤も聴いてみたいと思います。
2009.08.23 17:16
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