プレートル指揮パリ管弦楽団・他の演奏で、ベルリオーズの「ファウストの劫罰」を聴く(1969年10月、パリ、サル・ワグラムでの録音)。
昨年は、この曲の公演を珍しいことに、ふた月続けて聴くことができたが、もうあんな経験はできるのかな?
プレートルの演奏は、端正な造形美を味わうことができる。
そして、ゲッダがファウストを歌っていることが、このディスクの大きな魅力のひとつ。期待にそぐわない。声はとても若々しく、張りがあり、音程はとても丁寧にコントロールされていて、安定感が抜群。
2幕で、混声合唱と歌うところでは、大勢の中から彼の声が、まるで後光が差したように立ち上るかのようであって、神秘的。マルガリータへの恋慕は、正しく狂気じみていていい。声がよく通るし、熱気もある。
バキエのメフィストもいい。声はドスがきいていて適度に邪悪、そして知性もある。押し出しも強いから、ファウストとのやりとりを優位にすすめていることが、歌からにじみ出ている。
地獄落ちの叫びは、ファウストともども、じっくりと間をとって、たっぷりと声量豊かなもの。
ベーカーはボリュームのある美女としてのマルガリータを演じている。なかなかゴージャスであって、幸薄いという感じはないが、歌そのものは文句なく立派であり、4幕の「紡ぎ歌」をはじめ、この演奏に花を添えていることは間違いない。
パリ管弦楽団は、設立当初の頃だと思うが、木管楽器を中心にいい味を出している。けっしてハメを外さないところは、プレートルが注意深く制御しているからだろう。「ハンガリー行進曲」は比較的おとなしい。
全体を通して、ここぞというときにピッコロがよく鳴っており、ステキだ。よって、「鬼火のメヌエット」は最高。「地獄への騎行」はやや速めに進行し、緊張感を煽る。
コーラスも整っている。しなやかなハーモニーが美しい。特に1幕、そして4幕は、闊達。
2幕の酔っ払いの合唱は、まったくのシラフの状態でもって、キッチリと歌いあげている。
ニコライ・ゲッタ(テノール)
ガブリエル・バキエ(バリトン)
ジャネット・ベーカー(メゾ・ソプラノ)
マリア・ペローヌ (ソプラノ)
ピエール・トー(バス)
パリ国立オペラ座合唱団
パースのビッグムーン。
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